第29話:夏休み、海へGO?
夏休みが始まって一週間が経過した。
今日はみんなで海へ行く日。夕の車で送迎してもらう予定だったのだが、不運なことに車検に出さなければならない事を忘れていたらしく、急遽出来なくなった。
それを聞いたボクが、「夕はしょうがないなぁ」とからかうとアイアンクローされた。めっちゃ痛かった。
そんなわけで今ボク達は怜奈の送迎に使っているリムジンに乗っている。
正直これで海に行くとかなり目立つんだけど、送ってくれるだけありがたいし、言わないことにした。
「な、なんだか私が乗るのは申し訳無いような。本当に乗って良かったんでしょうか」
「もちろんよ。あなたも私の友達なのだから」
「怜奈ちゃん……。ありがとう」
「けどみずなちゃんの気持ちもわかるなぁ。初めて乗る時ってやっぱり緊張しちゃうよね」
「だな。見ろよこれ、車の中に冷蔵庫とか普通にあるし、グラスも超高そうなやつだし」
「確かに高そうだけど、オシャレで私は好きだな。夕さんは? こういうの慣れてそうなイメージありますけど」
「そうね。オシャレだと思うけど、慣れてもいるかしら。雪の部屋にあるのが割とこういうのに似ているから」
「ん、確かにそうだね」
「……雪も夕さんも怜奈も、豪華な暮らししてるよね」
飛鳥が遠い目をしながら呟く。
「そういえば、飛鳥の家行ったことないね」
「ふえっ!? う、うち?」
「うん、飛鳥はボクの部屋に来たことあるのに、ボクは飛鳥の家に行ったことないのは、なんだか不公平じゃない」
「うっ。……じ、じゃあ、うち来る?」
「うん、今度行ってみたいなぁ」
「……わかった、近いうちにね」
飛鳥はなぜか顔を赤くしながら承諾した。どうしたんだろうか?
「あ、あの! 雪さん! 私も、いつでもいいですよ!」
「みずなの家に? いいの?」
「はい! 大歓迎です!」
「ん、じゃあみずなの家にもいつかね」
「えへへ、はい」
嬉しそうにうなずくみずな。すると顔を赤くしていた飛鳥がみずなを睨む。みずなも視線に気づいて睨み返す。……なんで?
二人の間でバチバチと鳴っているように感じた。
「お! みんな、着いたみたいだぞ」
駿介の言葉にボク達は窓から外の景色を眺める。視線の先には太陽の光が照らし、青
色に輝く大海原。海岸の周りは山に囲まれていて、海水の透明度は高く、とても綺麗だ。
ここは千葉県のとある海水浴場。以前、東京から近い、綺麗な海で検索したところ、ここがいいのではということで、今日は足を運んだ。
「ついたー!」
「海だー!」
車から降りるとさっそく飛鳥と美乃梨は走って行こうとする。
「こらこら、二人とも荷物持って。先に場所の確保をしなきゃ」
「「はーい!」」
夕が二人を止めて荷物を持たせる。こういう時やっぱり夕みたいな人がいてくれた方が楽……もとい、安心する。
「ほら、雪も見てないで荷物持って頂戴」
「はーい」
各自荷物を持って砂浜へと向かい、ブルーシートを敷いてパラソルを差す。そこに荷物を置いたら、後は着替えてくるだけなのだが。
「じゃあ後は着替えて……」
「それなら大丈夫です!」
「え? どういう……」
夕が疑問に思っていると、飛鳥と美乃梨、怜奈とみずなは一斉に服をバッと脱いだ。………って!!
「わ……ちょっ!?」
「んぎゃあ!?」
ボクと駿介は思わず目を瞑った………いや、今悲鳴が聞こえたから、多分夕に目つぶしされたのかも。
「ちょっと、いきなりこんな場所で脱ぐなん……て……。ああ、そういうことね」
「えへへ、驚かせてごめんなさい。雪も目を開けていいよ、水着着てるから」
「………え?」
言われた通り目を開けると、そこには確かに水着を着た飛鳥達が立っていた。
「えっへっへ~、どうどう? 似合う?」
最初にそう聞いてきたのは飛鳥。
彼女は薄いオレンジ色のいわゆるクロスデザインという、バストのフロント部分がクロスしたデザインの、程よくセクシーさが出ている水着。飛鳥のスタイルの良さと相まって、とても魅力的に映る。
……しかしここで問題が発生する。またもやボクの顔が一瞬で赤くなる。彼女の姿にドキドキしているのがわかる。
「え、えっと。似合う……と思う。すごくきれい」
「やった! ありがと、雪!」
ボクが褒めてあげると、飛鳥は両手を挙げて喜んだ。その様子を見て、ボクはさらにドキッとする。
「あ、あの! 私はどうでしょうか!」
次にみずなが聞いてきた。
みずなは白をベースにしたフリルビキニ。綺麗な水色の髪との組み合わせが抜群で、彼女もまた、とても美しく見えた。
ボクはまだドキドキしっぱなしだ。
「うん、似合ってるよ。可愛いと思う」
「……ッ! ありがとうございます!」
「よかったね、みずな」
「えへへ、はい。飛鳥さんも」
二人はハイタッチをして喜んでいる。
さっきは車の中でバチバチしてたのに、不思議だ。
「ふふっ、姫様もそろそろ着替えてきたらどうかしら」
怜奈は二人を見て微笑みながら、ボクに言う。
怜奈は黒のビキニにパレオ付きの、大人な雰囲気がある水着を着ていた。怜奈の元々の落ち着いた雰囲気もあってか、彼女もとても魅力的に映っていた。
「怜奈も似合ってるね。大人っぽい」
「あら、私まで褒めてくれるなんて。ありがとう、姫様」
嬉しそうにボクにも微笑む怜奈。
「じゃあ最後は私かな。駿介、姫様。どうかな」
クルリと回転しながら水着を披露する美乃梨。
彼女は黄色のワンピースタイプの水着。明るい性格の美乃梨とは相性がピッタリだろう。
「可愛いと思うよ、似合ってる」
「えへへ、ありがとう! 駿介は?」
駿介の方を見ると、彼は目を閉じながら美乃梨に言った。
「……美乃梨、まだ目が見えないんだ、すまん」
「あ、うん。目潰しされてたもんね」
こればかりはしょうがない。未だに痛そうにしているし。
夕も結構容赦なくやったんだね。
「さ、それじゃあ私達は更衣室で着替えましょう」
「本当に容赦ないね、夕」
駿介のことは悪びれもせずに言ってのける夕に、ボク達は苦笑いだ。
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