第2章
恋と自覚と転校生とライバルと?
第16話:夏突入で、怜奈が大ピンチ…あ、また次回?
あれから、10日には飛鳥も連れて夕の車で両親のお墓参りに行った。真剣にお参りしてくれている飛鳥を見て、ボクは改めて話して良かったと思う。
ただ不思議なのが、飛鳥を見るたびに少しドキッとする事が増えてきた。これが何なのかは、相変わらず分からないけど。
そんなこんなで5月同様、あっという間に6月も過ぎていき、7月。いよいよ夏に突入した。といってもまだそこまで暑いわけでもなく、比較的過ごしやすい日々であるが。
7月4日の今日、午前の授業が終了し、お昼休みになると、用事で外している駿介以外のメンバーがボクの元に集まり、弁当を食べていた。
「う〜ん、いよいよだねぇ…」
「そうだねぇ、いよいよだよぉ…」
「…何がいよいよなのかしら?」
「愚問だよ怜奈! ない夏といえば!」
「海!」
「プール!」
「スイカ!」
「かき氷!」
「夏祭り!」
「花火!」
「イーティーシー、イーティーシーだよ!」
「最後なぜアルファベット読みなのかしら…」
飛鳥と美乃梨の急なハイテンションに、若干引きながらツッコミを入れる怜奈。
「と・に・か・く! 夏はやる事いっっぱい! あるんだから! 呆けてる暇なんて無いんだよ!」
「最初呆けていたのはあなた達だけれどね」
「あ、あはは」
ボクはそんな三人を眺めて渇いた声で笑う。するとそこへ用事を済ませた駿介もやってきた。
「何の話をしてるんだ?」
「あ、うん。夏のイベントについて…かな」
「夏イベかぁ、やっぱ夏祭りは行っておきたいよな」
「ホラァ! 福谷もそう言ってるし!」
「もう、わかったわよ。確かに楽しみなのは間違いないものね」
「よし! 怜奈ちゃんもわかってくれたところで、夏休みの計画、立てちゃいましょ!」
「そうだね! とりあえずみんなの予定を聞いて、集まれそうな日を知りたいかな」
そうしてみんなの現時点での日程を確認しつつ、やりたい事をピックアップし、予定を立てていく。
そんな中、ふと怜奈の様子が少しおかしい事に気付いた。
「怜奈? どうしたの?」
「え? …ああごめんなさい。少し考え事をしていただけよ」
「悩み事?」
「…そうね、悩んではいるかしらね」
ちょっと曖昧な感じでそう言った。本当にどうしたんだろうか、こういう怜奈は珍しい。
「よかったら聞こうか?何ができるってわけじゃ無いかもだけど」
「……そうね。じゃあ放課後、少し付き合ってくれるかしら」
「うん、いいよ。今日は何も予定ないしね」
そう言うと怜奈は少し笑って「ありがとう」とお礼する。
「怜奈、私もいい?」
「ええ、もちろんよ。飛鳥もありがとう」
「…あー、私たちも力になってあげたいとこだけど」
「実は今日、俺の両親が海外から帰ってくるみたいでさ。美乃梨も一緒に顔見せろって言われてて」
「あ、そうなの? 二人とも元気そうだね」
「やかましいくらいにな。出来れば雪もって言ってたけど、また今度だな」
「ふふっ、わかった」
「というわけで、ごめん怜奈ちゃん! 何かあったら今度は絶対力になるから!」
「じゃあ今回は気持ちだけ受け取っておくわね。ありがとう」
二人にもそうお礼を言った怜奈。みんな友達思いでいい人ばかりだなぁと思う。
「言っておくけど、あなたもその一人なのよ?」
「…うん、人の心の中読まないでね」
放課後の予定が決まったところで、再び夏休みの予定を決めていく。なんだかんだ順調に立てられたところで、午後の授業開始のベルが鳴った。
「それじゃあ今日はここまでかな。続きはまた明日ってことで」
「はーい」
午後の授業が終了し、放課後になった。ボクと飛鳥は怜奈に連れられて校門前までやってきた。
「って、どこへ行くの?」
「私の家よ」
「怜奈の?なら早く行こうよ」
「まあ待って頂戴。もうすぐ来るから」
「え? 来るって…」
「あ、そっか。雪は知らないんだっけ。怜奈はね、登下校は基本的に車なんだよ」
「そうなんだ。…ああでも、怜奈ってホントのお嬢様なんだよね。それくらい普通なのかな」
「普通かどうかはわからないけれど、私の場合は小学生の頃からそうだったわね」
「へぇ〜」
やっぱりあれかな、リムジンとかそういう高級車なのかな。あ、でも怜奈ってあんまり目立つの好きじゃないって聞いたことあるし、案外普通車だったり?
そんなことを考えていると、車の走る音が近づいてきて、それはボクらの前で止まった。
「さ、乗って頂戴」
「はーい!」
「…さすが怜奈、期待を裏切らない」
「……?」
目の前に止まっているのは、やはりと言うべきか。
リムジンであった。
「す、すごいね。本物のリムジンだ。初めて見た」
「あら、姫様は乗ったことないのかしら。てっきりそういうイメージだったのだけれど」
「あはは、いくらなんでも。いつもは夕の普通車だよ。まあカッコいいやつだけど」
「あ、前に乗せてもらったやつ? 赤いスポーツカーっぽいやつだよね! 確かにカッコよかった!」
「…へぇ。乗せてもらった…ね。それは姫様と一緒にってことかしら?」
「あ、うん。……えっと」
チラッとボクの方を見た飛鳥。話してもいいかどうかってことだろう。ボクはコクっと頷いて見せた。
「…雪の、ご両親のお墓参り。先月一緒に行かせてもらったの」
「……そう、なるほどね。あまり、深くは聞かないことにするわ」
「ごめん、いずれはちゃんと話すよ。どうせなら、みんな揃った時の方がいいしね」
「ええ、待っているわね」
「それでさ、結局怜奈の悩み事って何なの?」
「…そうね。もうすぐ家に着くから、詳しいことはそこで話すけれど」
この後、少し衝撃的な言葉が怜奈から発せられた。
「ひとまず言っておくとしたら……私には、許婚がいるのよ。年上のね」
「え……」
「「ぇええええええ!?」」
これはなんだか、厄介な雰囲気になってきたと、ボクと飛鳥は感じ取った。
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