第14話:梅雨の時期、それは雪の……?
ゴールデンウィークが明けて学校が再開すると、あっという間に5月は過ぎ、6月に突入した。梅雨の時期でもあるため、だんだん雨が降る頻度が増えていく。
そんな中、今日も今日とて学校へ登校し授業を受ける。最近は大きなイベントも学校仕事共に無く、至って平穏な日々である。まあでも…。
「はぁぁぁ…姫様、なんて可憐な!」
「あぁ! 憂いてる姿も、また愛おしい!」
「グフフ、ひ、姫様…」
「おい! いい加減こいつどうにかした方がいいんじゃないか!?」
このクラスは相変わらず騒がしいけどね。何て思いながら窓の外を眺めていると、駿介が騒いでるクラスメイトを見ながらこちらにやって来た。
「もういい加減慣れてきたと思ってたけど、やっぱ喧しいもんだな。つまらないよりかはマシなんだろうけどさ」
「あはは、そうだね」
「…それより、最近どうかしたのか?なんかたまに、心ここに在らずって感じの時多いけど」
「……そうかな」
それ程意識したことはないのだけど…いや、無意識だからそうなってるのか。けど心当たりはある。なにせもうすぐ…。
「多分、もうすぐあの日だからかも」
「あの日? ………っ!すまん、そうだったな」
「別に謝らなくていいってば」
駿介はそれでもすまないと謝ったが、気にする事じゃないし、ボクがズルズル引きずってるからだというのも自覚してる。けれどどうしても、考えてしまうのだ。
…そうだ、その事で飛鳥と約束してたっけ。ちょうどいい機会なのかもしれない。彼女にはちゃんと話しておこう。
そう思い立ったボクは立ち上がる。
「ん? どっか行くのか?」
「ちょっと飛鳥に用事があったの思い出したから、行ってくるよ」
「ああそういうこと。了解だ…ガンバレよ〜」
とニヤニヤした表情でこちらを見る。
「何を考えてるのか知らないけど、多分違うからね」
「はは、わかってるって」
からかう駿介にジト目を向けた後、ボクは飛鳥の方へと向かった。
「飛鳥、ちょっといいかな」
そう言いながら彼女を手招きをして呼ぶ。すると飛鳥はすぐにこちらに来てくれた。
「どうしたの?」
「あのさ、先月の約束覚えてる?大阪でのこと」
「あ…うん。もちろんだよって、もしかして?」
「うん。出来れば今日か明日にでも話しておきたいんだけど」
「今日! 聞きたい、です!」
ずいっと顔を近づけてくる飛鳥。ボクは苦笑いしながら頷いた。
「わ、わかった。じゃあ今日の放課後、うちに来てくれる?」
「うん! わかっ……た?え、雪の家?」
「うん。あ、他の場所がいいなら…」
「いいいいえ!! 行きます!!」
「そ、そう。じゃあそういうことで、また放課後にね」
そう言ってボクは何やら慌てている飛鳥を背に、自分の席へ戻るのだった。
(ど、どうしよう!? 雪の家なんて初めて行くし! ていうか好きな人の家に上がるとか!)
「き、緊張してきた」
私はバクバク鳴ってる心臓を抑えるように胸に手を当てる。
(いやいや待て、違うよ飛鳥! 落ち着け! 一度深呼吸を…)
深呼吸をしてどうにか心と心拍を落ち着かせる。
(今日はそういう浮いた話は無し。雪の大事な過去について聞きに行くんだから!)
……とはいうものの、やはり緊張してしまう私である。
放課後になり、クラスメイトも各々部活なり帰宅なりしていく中、ボクと飛鳥も共にうちへ向かっていた。
やがて家…というかまあ、マンションの一室だけど…に着いて、鍵を開けて中へと入る。
「……あの、雪。ちょっと聞いてもいい?」
「うん? なに?」
「私の記憶が正しかったら、このマンションって結構高級なとこだよね?」
「うーん、どうだったかな? その辺は夕に任せてあるから詳しくないけど。あ、でも確か夕が一般的には買うのは難しいとかなんとか言ってたっけ」
「あーうん、だろうね。それでさ、ここって最上階だよね?」
「そうだけど、それがどうしたの?」
「………凄すぎる」
何やら唖然としている飛鳥だが、正直何に驚いているのかわからない。が、なんとなく察しはつく。ボクの感覚がずれている事は。
「えっと、やっぱり一般的じゃないのかな、こういうとこに住むのは」
「…まあそうだね、これが一般的だったらお金持ちしかこの世にいないことになるからね、あはは」
と乾いた声で笑う飛鳥。やっぱりそうなんだとボクは思った。
「まあとりあえず座ってよ。飲み物何がいい?」
「あ、えっと、お茶でお願いします」
「ん、わかった」
キッチンの冷蔵庫からお茶を取り出し、二人分のコップに注いでリビングに持っていく。その間飛鳥は窓から外の景色を眺めていた。
「わぁぁぁ…凄いいい眺め! これ夜になったらもっと綺麗なんだよね?」
「そうだね、街のほとんどを一望できるし、綺麗なのは確かだね」
「うわぁ、いいなぁ。私も一度は住んでみたい。そしてお嬢様気分を存分に味わうの!」
「あはは、それはいいかもね」
叶うかどうかはわからない夢を思い描く飛鳥に、お茶を差し出したあと、さっそく本題に入ることにした。
「じゃあさっそく話をしようと思うのだけど、いいかな」
「う、うん! お願いします!」
「…2年前の6月10日。この日、ボクの両親が事故で亡くなったんだ」
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