◉最後の一撃! 暗黒vs太陽

突如強力な輝きの気配を感じ取り、3体のフレンズ型セルリアンは一斉にビーストの方を向いた。するとなんと、瀕死の状態だったはずの彼女が立ち上がっている。それを見た3体はすぐさま彼女に飛びかかった。


女王「この、死に損ないガァッ!」


ドカカカッ!

3体の攻撃が当たった…ように思えたが、彼女の体を包んだ強烈な輝きがそれらを押し返していた。

と、サーバル型の体がぐらりとよろめいた。よく見るとビーストの右の手刀が、その胸に深々と突き刺さっている。そしてサーバル型が弾け飛ぶと同時に彼女が右腕を薙ぎ払うと、強い輝きと衝撃が巻き起こり、残りの2体も勢いよく吹っ飛ばされた。


ゴシャァン!

2体は壁に叩きつけられた。そして壁とビースト型に挟まれたカラカル型は衝撃に耐えきれず、全身が砕けてバラバラになってしまった。

女王「バカナ…なんだこのチカラハ…。」


女王の驚愕と恐怖の入り混じった視線の先には、輝きをまとったビーストが静かに佇んでいた。その瞳からは迷いのない、決然とした光が見て取れる。

彼女はゆっくりと息を吐くと、両足を踏ん張り身構えた。すると頭の紋章が、これまでになく強く輝き始めた。今まで欠けていた部分にも模様が現れ、全体が炎のように揺らめいている。そして野生動物のようだった彼女の大きな手が輝きとなって弾け飛び、細くて華奢なフレンズの手となった。

その勢いはどんどん増してゆき、ついには彼女の全身が白く激しく輝きだした。そのまばゆさは、あたかもホテルの屋上に小さな太陽が現れたかのようだった。


その圧倒的な力に押され、女王がビリビリと震えた。

女王「ば…、化獣(ばけもの)メ…!」


ビースト「その通りだ女王…、お前以上の、なっ…!!!」


女王「ふざけるナァ!きさまはついさっきまで死にかけていたんだゾ、いくらビーストとはいえこれほどのパワー、一瞬で引き出せるわけがナイ!それこそ奇跡でも起きない限りハッ…、ン?キセキ…、マサカッ‼︎」


とっさに女王が天を仰ぐと、パークのあちこちから立ち上った輝きの奔流がホテルへと集まって来ていた。


その頃、船の上ではキュルル達が声援を送り続けていた。そしてキュルルの腕のラッキービーストは、ホテルでの出来事をパーク中のラッキービースト達に送信し、全てのフレンズにビーストの活躍とキュルル達の声を届けるよう働きかけていた。これにより、各地のフレンズ達も応援に加わった。

こうしてみんなの心が一つとなって、ホテルを中心とした大規模なけもハーモニーが起こった。そしてその力は、全てビーストに流れ込んでいた。


女王「ア゛ア゛ッ、しつこいしつこいしつこイ!どうあっても邪魔するつもりカァッ!」


ビースト型セルリアンはゆらりと立ち上がると、全身を震わせ雄叫びをあげた。するとホテル中を覆っていた大量のセルリウムが、一斉にビースト型に集まってきた。それらは折り重なり絡み合って、グネグネと蠢きながら何かを形作ってゆく。


そして女王の顔をしたビースト型セルリアンとなった。大きさはビーストの倍、そしてその体は鎧のような筋肉で覆われていて、全身から黒い炎のような輝きが噴き出している。


女王「グォォォッ!」

女王の咆哮と共に凄まじい風が向かってきた。ビーストが吹き飛ばされないようグッと体を縮めると、女王が右の拳を握りしめた。凶々しい気配がどんどんふくれあがってゆく。するとその全身を覆っていた黒い輝きがそこに集まってゆき、やがて真っ黒な炎の渦をまとった巨大な5本の爪が形成された。そして女王は爪を構えると、彼女めがけて一直線に襲いかかってきた。その様はまるで黒い光の矢のようだ。


一方ビーストも右手に力を込めた。すると輝きが指先に集まってゆき、5本の白く輝く爪となった。そして思い切り地面を蹴ると、白い光の矢となって女王に向かっていった。


しかし2つの矢がぶつかり合うかに思われた次の瞬間、ビーストの体がガクンと止まった。

なんとカラカル型の腕が、ビーストの足に絡みついて動きを封じていた。そして女王の爪が、唸りを上げながら彼女の頭めがけて振り下ろされた。


ガッシィィィン!!

ビーストはとっさに上を向き、口で相手の爪を咥えて受け止めた。あまりの衝撃に両足が床にめり込んだが、彼女は怯まずにそのまま体を大きくのけぞらせた。そして女王を思いっきり床に叩きつけると同時に、相手の爪を噛み砕いた。それからその胸に飛び乗って、渾身の力を込めた右の爪を女王の頭に突き入れた。


ドォォォォンッ!!!

まるで小型の隕石が落ちてきたかのような爆音と衝撃により、屋上が吹き飛んだ。それでも勢いは止まらず、ビーストは女王と一緒に天井をぶち破りながら、どんどん階下へと落ちていった。そして何枚目かの天井を破ったところで、ついにビーストの爪が女王の頭を貫いた。


女王「ウガァァァァ!!!」


その先に、キュルルのスケッチブックが落ちていた。そして落下してきたビーストの鋭い爪が当たった。するとそれは一瞬で粉々になり、女王の断末魔と一緒に部屋ごと吹っ飛んだ。


激しい戦いの衝撃と輝きは、船の上のキュルル達にも伝わっていた。そして大きな音と共に屋上が吹き飛んだかと思うと、そこからどんどん下の階へと亀裂が走ってゆき、ついには海中で大きな爆発が起こった。すると轟音を轟かせながらホテルが倒壊し始めた。


博士「ホテルが…!」

キュルル「ビーストォォォ!!!」

そしてあっという間にホテルは崩れ去り、瓦礫の山となった。キュルル達はその様子を呆然と見つめていた。

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