◉浮上

同じ頃、キュルル達の目の前の海面に、ボコボコと泡が浮かび上がってきた。

メガネカイマン「何ですか!?」

G・ロードランナー「セルリアンか!?」


フレンズ達が身構えていると、海面が大きく盛り上がり、そこからジャパリバスが現れた。

ゴリラ「かばんさん達だ!」

イエイヌ「よかった、無事だったんですね!」


運転席の中では、かばんさん、サーバル、助手、そしてアライさんとフェネックが息も絶え絶えな様子で倒れていた。

そしてずっとみんなを励まし続けていたラッキーさんが、喜びの声をあげた。


ラッキーさん「ヤッタ、海上ダヨ!」

アライさん「ハァ〜…、苦しかったのだ…。」

フェネック「死ぬかと思ったよ…。」

助手「『君子危うく散りかける』…、もう海はこりごりなのです…。」

サーバル「うみゃ…ありがとうセーバル…。」

かばん「ゼェ…、空気って、こんなに美味しかったんだ…ハァ…。」


海獣のフレンズ達が、バスを船の近くに運んでかばんさん達を引き上げた。

みんなしばらくのびていたが、5分ほどで息を吹き返した。

そしてサーバルがかばんさんの隣でこう言った。

サーバル「はぁはぁ…、やったね、かばんちゃん!」


かばん「ふぅ…、ホント、もう駄目かと思ったよ。まさか神獣のみんなが力を貸してくれるなんて!今度はちゃんとお礼を言う方法を考えないと…。」


サーバル「そんな事より…、はい!やくそくだよ、かばんちゃん!」

そう言って、サーバルは胸につけていた赤い羽をかばんさんに差し出した。


かばん「…うん…!」

それを見て、かばんさんは目を潤ませながら帽子を脱ぐと、サーバルの前に差し出した。そしてサーバルが赤い羽を帽子に刺すと、満面の笑みを浮かべた。

かばん「…おかえり、サーバルちゃん‼︎」

サーバル「ただいま、かばんちゃん‼︎」

そして2人は笑い合った。


そこへ、キュルルが話しかけてきた。

キュルル「みんな無事でよかった…!おかえりなさい!体はもう大丈夫なんですか?」

かばん「うん、何とかね。海底火山はフィルターを張り直してきたから、地震と海のセルリウムは落ち着くはず。…詳しい事は後で話すとして、ビーストは来ているの?」


キュルルは唇を噛むと、ホテルの方を向いた。

キュルル「みんなのピンチに駆けつけてくれました、でも…。まだ、あそこです…。」


ホテルはセルリウムでびっしりと覆われていて、まるで真っ黒で巨大なセルリアンのようだった。


かばん「そう…。」


キュルル「結局僕は、最後まであの子に頼ってしまいました。僕たちを逃して、誰の手も届かないあの場所に…、ちっ…くしょう…!」


キュルルは目をつぶって歯を食いしばると、涙をポロポロと流しながら体を震わせた。そんな彼にみんなが声をかけた。


博士「キュルル、しっかり前を見るのです。幾多の戦いを乗り越えてきたあの子があれほど取り乱したのですから、余程のことが起こっているのでしょう。ですが、誰よりもビーストのことを気にかけてきたお前が、あの子を信じてあげなくてどうするのですか。」


助手「みんなが全力を出したからこそ、誰一人欠けることなくここにいられるのです。だからビーストは、気兼ねなくあそこで戦うことができるのです。『万事を尽くせば天命が来る』…、もはや我々にできるのは、彼女の勝利を祈って待つ事だけなのです。」


かばん「あの子は僕達の肩を蹴って、駆け上がって行ったんだよ。最後の決着をつけるために…。」


サーバル「大丈夫だよ、あの子は必ず帰ってくるよ!」


アライさん「心配ないのだ!あんなに強いフレンズは他にいないのだ!」


フェネック「下ばっかり向いてると、あの子におかえりって言えないよ〜。」


それを聞いたキュルルは、拳で涙を拭った。

キュルル「…うん、そうだね。もう泣かないよ!」


そしてキッとホテルを見上げて叫んだ。

キュルル「ビースト、勝って!そして…、戻ってきて、僕たちの所に!!」


「頑張って!」「負けないで!」「諦めないで!」

キュルルの言葉を皮切りに、他のフレンズ達も口々にホテルに向かって声援を送った。

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