◉5色の輝き

かばんさん達がバリアーを解除したため、ジャパリバスも水圧でひしゃげていった。すると、セットされていたテープから希望の歌が流れ始めた。歌は海水を伝って、あたりに響き渡った。


すると、それまでぐったりしていたかばんさんの体が、突然力強く水をかいた。その足のひと蹴りで、アシカ型の手が吹き飛んだ。そしてオーブをしっかりと掴むと、石板の穴にはめ込んだ。


4つのオーブがぼんやりと輝いた。そしてかばんさん達の体が、それぞれ赤、黒、白、青、緑色の輝きで包まれた。輝きの中から声が聞こえる。


かばんさん・赤(スザク)「懐かしい歌じゃなぁ…、よい手土産じゃ。お礼に少しばかり暴れてやるかの!」


助手・黒(ゲンブ)「歌はいい…、心が洗われる…。もっとも、わしはうまく歌えぬがのぉ。…わしとて、かような気持ちは持ち合わせておるのじゃ。無論、困っている者を助けようという気持ちもな。」


アライさん・白(ビャッコ)「久方ぶりの客人は、いつぞやの4人と出不精のオサ殿か。わざわざここまで出張るとは、余程のことが起きたのか、この4人に惚れ込んだのか…。面白い、力を貸そうぞ!」


フェネック・青(セイリュウ)「あなた達の頑張り、しかと心に留めたわ。すみません、少しの間、体をお借りします。あとは任せてちょうだいね。」


サーバル・緑(セーバル)「来てくれたんだね、サーバル。サーバルはセーバルの事、覚えてないのかな。でも大丈夫、セーバルはサーバルの事覚えてるから。ずっとずっといつまでも…。」


そして5人は、2体のフレンズ型セルリアンと周囲のセルリウムを消し飛ばしながら、一直線に火口へと向かっていった。そして4人(四神)はそれぞれのプレートに乗ると、一斉に力を解放した。


4人(四神)「「「「はあぁぁぁぁぁっ!!!!」」」」


4つのプレートの上に、4色の光の柱が立ち上った。そしてサーバル(セーバル)が、その膨大なエネルギーを全て手に集め、あやとりのようにまとめあげると、一気に火口へと注ぎ込んだ。


強烈な輝きが、火口から山の内部へと流れ込んでゆく。すると、噴煙も地鳴りも嘘のように鎮まり、火口がフィルターで覆われた。




サーバル「う…、う〜ん…。」

サーバルはうっすらと目を開けた。するといつの間にかジャパリバスの運転席に座っていた。周りにはみんなもいる。ぐったりしているが生きているようだ。そしてバスは巨大な泡で覆われていて、その向こうで四神とセーバルが手を振っている。


スザク「また来るがいい。日々の精進と、土産を忘れずにな。」


セイリュウ「かき集めた空気よ。十分とはいかないけど、なんとか海上までは持つわ。」


ビャッコ「なに、少しばかりの辛抱だ。海の上で嫌というほど堪能せい。」


ゲンブ「不便がなければありがたみが分からぬとは…。難儀なものよのぅ…。」


セーバル「そういえば、ちゃんとお別れ言ってなかったね、バイバイ、サーバル!」


そしてセイリュウが長い尾を一振りすると、潮の流れが変わってバスが浮上し始めた。5人の姿がどんどん遠ざかってゆく。


そしてラッキーさんの声がした。

ラッキーさん「ミンナ、シッカリ!海上マデアト…」

ここでまた、サーバルの意識は途切れた。

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