◉“私”の決意
翌日、かばんちゃん達は旅立つアライさんとフェネックを見送った。それから真っ先に取り組んだのは、美味しいカレーを作る事だった。しかしここには、カレーの材料であるお米や小麦粉やスパイスが見つからず、代わりにたくさんのトウガラシがあった。そして試行錯誤の末できあがった激辛鍋は、ここでの定番メニューとなった。
それから数日後、2人が帰ってきた。
アライさん「ただいまなのだ!遊園地でお宝を見つけたのだ!」
フェネック「齧られちゃったボスへのお土産だよ〜。」
それは海賊帽子と眼帯だった。アライさんは、早速それらを怪我をしたラッキービーストに被せてあげた。そして目をキラキラさせながらボスを抱き上げた。
アライさん「おお〜、カッコいいのだ!ボスも早く元気になるのだ!」
しかしかばんちゃんは、このラッキービーストから聞かされていた。休んでも体の調子が戻らず、以前のようにパークを歩き回る事はできなくなってしまったそうだ。
気がかりはもう一つあった。
あれからサーバルキャットはずっとここで暮らしていたのだが、環境が合わないらしく日に日に元気がなくなっていった。
もちろんかばんちゃんは、サーバルキャットに適したちほーで一緒に暮らす事も考えた。だが、研究を続けるためにはここ以上の場所はない。
また他にも利点があった。ヒトの輝きが強力なセルリアンを生み出してしまった以上、同じ事が起こりかねない。しかしこの閉鎖された環境なら、万が一の事が起こっても自分たちだけで対処できる。
そしてある日決心した。断腸の思いだったが、サーバルキャットとお別れする事にしたかばんちゃんは、みんなと一緒にモノレールに乗り込むとサバンナへと向かった。
初めのうちはこらえていたが、次第に目的地が近づくにつれ、ポロポロと涙が溢れてきた。そしてかばんちゃんは、泣きじゃくりながらサーバルキャットを抱きしめた。
やがて、モノレールがサバンナに到着した。
駅から出たかばんちゃんはサーバルキャットを下ろすと、帽子から赤い羽を引き抜き、その子の胸に刺した。
すると、サーバルキャットはかばんちゃんの手に顔をこすりつけた。それから名残惜しそうな顔をしながらフイっと背を向けると、そのままトボトボと歩き始めた。そして何度も振り返りながら、地平線の向こうへと消えていった。
かばんちゃんは涙で顔をくしゃくしゃにして、ろくにまばたきもせずその様子を見つめていた。
かばんちゃん「サーバルちゃんっ…、ぼくっ…」
ここまで言ったところで右腕で乱暴に顔を拭うと、嗚咽しながら叫んだ。
「私、強くなる!パークの異変もセルリアンも全部解決できるように、もっともっと強く賢くなるからさっ…約束するよ!そしたら必ずまた来るからっ…、待っててね‼︎」
こうしてかばんちゃんはサーバルと別れた。また本人の希望で、パイレーツラッキーはモノレールの運転席で過ごす事となった。
かばんちゃん「パイレーツさん…、いつか、サーバルちゃんがこれに乗って戻ってくるようだったら、その時は…」
ラッキービースト「マカセテ。さーばるガじゃんぐるニ向カッタラ連絡スルヨ。」
しかしその約束は、地震でレールが崩壊したため、果たされずに終わった。
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