海底火山編

◉サーバルの過去

ジャパリバスは、海底火山へ向かって海の底を進んでいた。かばんさん達は、ヘルメット越しに運転席の窓の外をじっと見つめている。


アライさん「ここに来るのも久しぶりなのだ。」

フェネック「や〜、おっきな岩や山の形なんかも、結構変わっちゃってるね〜。」


それを聞いたサーバルが、かばんさんにこう尋ねた。

サーバル「ねえかばんちゃん、『ジャパリまんくらいの大きさで、まんまるなものが落ちてないかよく見てて』って言ってたけど、もしかしてここに来たことがあるの?それに火山を止めるって、どうやるの?」


かばんさん「ん…、やっぱり、話しておくべきだよね…。」


かばんさんは少し口ごもった後、サーバルに過去の出来事を語り始めた。



それはまだ、かばんさんがかばんちゃんだった頃…。

ある日、突然フレンズから野生解放が失われ、大型セルリアンがよく現れるようになった。ジャパリバスで各地を回りながら、その原因を独自に調査していたかばんちゃん、サーバル、アライさん、フェネックの4人は、最近活動が活発化しているこの火山を訪れた。


その頃はまだ、この辺りは海に沈んでいなかった。

山の麓には4つの丸い穴が開いた石板があり、そこにジャパリまんほどの大きさの、赤、青、黒の3つのキラキラした玉がそれぞれはまっていた。

そして、その周りをウロウロしているラッキービーストがいた。


かばんちゃんがそのラッキービーストに声をかけた。

かばんちゃん「すみません、これはなんですか?それとあなたは何をしてるんですか?」


ラッキービースト「ハジメマシテ!コノ丸イノハおーぶダヨ。ぱーくヲ守ッテイル四神ノチカラノ一部ガ結晶トナッタモノナンダ。コレハ火口ノ周リニ置カレタ4枚ノぷれーとト連動シテイテ、4ツガ石板ニハマッテイレバ、火口ニふぃるたーが発生スルンダ。」


四神のオーブとはそれぞれ、赤がスザク、青がセイリュウ、白がビャッコ、黒がゲンブというフレンズのものらしい。


ラッキービースト「デモ地震ノセイカ、びゃっこノおーぶガドコカヘ行ッチャッテ…。ソレヲ探シテルンダ。」


かばんちゃん「なら、僕たちもお手伝いします。一緒に探しましょう!」


アライさん「探し物なら、アライさんに任せるのだ!」


かばんちゃん達はあたりを捜索した。するとアライさんが、近くの岩陰から白いオーブを見つけた。


アライさん「あったのだ、白いまんまる!」


フェネック「おお〜、さすがだねぇ、アライさ〜ん。」


サーバル「やったね、アライグマ!」


アライさん「ふっふーん、アライさんにお任せなのだ!」


かばんちゃん「すごいです!それじゃあ、早く元の場所に戻しましょう!」


アライさんがオーブを石板にはめ込もうとした時、ガシャンと音がした。みんながそちらを見ると、両耳と左目を食いちぎられたラッキービーストが倒れていて、そのそばにふた抱えほどの大きさの、黒い帽子型セルリアンが浮かんでいた。


そいつは大きな一つ目でアライさんを睨むと、巨大な口を開けながら飛びかかってきた。そしてアライさんの手からオーブを掠め取って飲み込んだ。


アライさん「なっ…、返すのだー!」


すると帽子型は、空中で身を翻すと、凄いスピードでアライさんに向かってきた。アライさんは野生解放しようと力を込めたが、やはり使えない。それでもなんとか帽子型の突進を受け止めた。そしてサーバルとフェネックが同時に飛びかかり、全力で爪を叩き込んだ。


ドガガガッ!

ところが、大きな音と共に3人が吹き飛ばされた。相手は帽子に宿っていたヒトの輝きを取り込んだ強力なセルリアンだった。野生解放の使えない今の3人にとって、敵う相手ではなかったのだ。

そして帽子型は、今度はかばんちゃんに向かってきた。


セルリアン「グオォォォー!」

かばんちゃん「うわぁっ!!」


バシィ!

するとかばんちゃんの目の前で、激しい音と光が巻き起こった。

かばんちゃん「サーバルちゃん⁉︎」


なんとサーバルが、持てる力の全てを振り絞ってかばんちゃんの前に立ちはだかっていた。全身からけものプラズムが吹き出していて、体全体がまるで太陽のように輝いている。

すると次第にサーバルの輪郭がぼやけ、どんどん体が小さくなっていった。


バァン!

突然輝きが弾けた。帽子型はよろめき、サーバルは後方に吹き飛んで、岩に叩きつけられた。

かばんちゃん「サーバルちゃん、大丈夫⁉︎」


駆け寄ったかばんちゃんが見たものは、倒れているサーバルキャットだった。けものプラズムが尽きて、サーバルは動物に戻ってしまったのだ。


セルリアン「ウォォォォーン!」

そして叫び声と共に、再び帽子型が2人に襲いかかってきた。


かばんちゃん「サーバルちゃんだけは、絶対に守る!」

かばんちゃんはサーバルキャットを抱きしめると、ギュッと目を閉じた。


すると、空から何かが帽子型目掛けてものすごい速さで落ちてきた。そして両手の爪を閃かせると、帽子型の頭に深々と突き刺した。


セルリアン「ギョォォォォォォ⁉︎」

その叫び声で、かばんちゃんは目を開けた。すると、帽子型の上にオレンジ色をした大きな体のフレンズがいた。その子の頭には、一部が欠けたトラ柄の紋章が輝いている。帽子型は必死に振り払おうとしていたが、その子は両腕にグッと力を込めると、そのまま帽子型を真っ二つに引き裂いた。


セルリアン「ゴァァァァァァァ!!!」

耳をつんざくような断末魔を上げながら、帽子型は消滅した。

そしてセルリアンのかけらがきらめく中を、オレンジ色のフレンズがゆっくりとかばんちゃんに向かって歩いてくる。紋章は消えていて、その大きな右手には、白いオーブが握られていた。


かばんちゃんはサーバルキャットを抱いたままへたりこんでいた。するとかばんちゃんの耳に、どこからか小さな声が聞こえてきた。

?「そいつはビースト、逃げないとお前まで喰われるぞ!」


かばんちゃん「え、ビースト?」


かばんちゃんは思わず身を固くした。するとビーストはかばんちゃんの目の前で立ち止まり、唸り声を上げた。

ビースト「グルルル…。」


そしてかばんちゃんにオーブを差し出した。その大きな手には黒くて鋭い爪が生え、手首には黒光りする厳つい手枷がはめられていて、重たそうな鎖がジャラジャラと揺れている。


しかし目つきは鋭いが、その子の雰囲気はとても穏やかだった。

かばんちゃん『もしかして、しゃべれないのかな。でもとっても親切なフレンズさんみたいだ。』


恐怖もあったが、かばんちゃんはペコリと頭を下げた。

かばんちゃん「あ、ありがとうございます…。あなたはビーストさんっていうんですか?どうも、危ないところを助けていただいて…。」


すると、突如ビーストの右腕から黒い輝きが立ち上った。その子はギョッとすると、オーブを取り落とし、左手で右手を抑えながら悶え始めた。そして高々と跳躍すると、あっという間に姿が見えなくなってしまった。


あまりに突然の出来事に、かばんちゃんは呆気に取られた。するとそこへ、アライさんとフェネックがやってきた。


アライさん「アイタタタタ…。かばんさん、大丈夫…、ああっ⁉︎サーバル!セルリアンに食べられたのか?」


かばんちゃん「違います!僕を守って、全身が輝いたと思ったらこうなって…。」


フェネック「ムリしすぎて戻っちゃったか…。かばんさん、ちょっと見せてね。…うん、よかった。気絶してるだけだから、しばらくすれば目を覚ますよ〜。」

その言葉を聞いて、2人ともひとまずホッとした。


アライさん「よかったのだ!それにしても、あのでっかいフレンズはなんだったのだ?」


かばんちゃん「え?ビーストだって教えてくれたの、おふたりじゃないんですか?」


フェネック「知らないよ〜。あの小さな声、てっきりかばんさんのだと思ったんだけど、違うのかなぁ?」


アライさん「2人とも、一体なんの事なのだ〜?」


結局、あの声がなんだったのかは分からずじまいだった。

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