◉真っ直ぐな思い
落ちてくるキュルルを見て、フレンズ達は慌てた。
メガネカイマン「キュルルさんが落ちてきます!」
ヒョウ「危ない、受け止めるんや!」
すると、カラカルがホテルの壁を蹴って空中でキュルルを受け止め、何度も回転しながら船に着地した。
博士「これで全員ですね!さあラッキービースト、早くここから離れるのです!」
博士が緑色のラッキービーストに指示を出すと、その目がチカチカと点滅した。そして船がゆっくりとホテルから離れ始めた。
カラカルはキュルルを下ろすと、隣にしゃがみ込んで心配そうに声をかけた。
カラカル「大丈夫、キュルル?」
キュルルは全身をカタカタと震わせながら、放心した様子で何度もこう呟いていた。
キュルル「だめだよビースト…、どうして…。」
カラカル「聞いて!あの子、最後にこう言ってたの。『みんな…、その子、頼む』って。」
キュルル「!!…なんだよ、それ…。やっとお話できたのに、初めてしゃべった言葉がそれなんて!」
キュルルは泣きながら、両の拳を床に叩きつけた。
そんなキュルルをなだめながら、カラカルが博士にこう尋ねた。
カラカル「ねえ、なんであんたはビーストの気持ちが分かったの?」
すると博士は、うつむきながらしんみりとした口調でこう答えた。
博士「…好きだから…ですかね…、数日一緒に過ごしただけでしたが、あの子の事はよく分かったのです。乱暴者だなんてとんでもない、とても優しく純粋で、それでいて脆い…、非常に危うい心を持っているのだと。」
この言葉に、同じようにキュルルに恋心を抱いているカラカルはハッとなった。
「それに、研究所を飛び出す際に大騒ぎをした時もあんな目をしていたのですよ、寂しさと申し訳なさが同居したような、あんな目を…。これまでも、苦しみを自分だけで抱え込んで生きてきたのでしょうね、あの子はしゃべれない上に、ずっと一人ぼっちでしたから…。」
そして博士は目に涙を浮かべながら唇を噛んだ。そこへ、オオミミギツネがキョロキョロと辺りを見回しながらやってきた。
オオミミギツネ「かばんさん達が見当たらないのですが!ご一緒ではなかったのですか?」
博士「…かばん達とサーバルは、海底火山を止めに行ったのです。私はサーバルの代わりに、ここに残ったのです。」
キュルル「えっ…!!!…なんで…、なんでだよ…!どうしてみんな、なんにも言わずにいなくなっちゃうんだよ…!」
すると博士が、キュルルの肩をそっと掴んだ。
博士「キュルル、分かって欲しいのです。不器用でも真っ直ぐな彼女達の思いを。」
それを聞いたキュルルは、嗚咽を漏らしながらうつむいた。
キュルル「ビーストぉ…、かばんさぁん…!」
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