◉別れ道
それからしばらくして…。
ようやくみんな目を覚まし、お互いの無事を確認したり、お礼を言い合ったりした。
サーバル「みんな無事でよかった。そういえばさっきのセルリアン、変な形してたね。」
G「同じ形のヤツなら見たことあるぞ。」
ロードランナーについて行くと、その言葉通り同じ形をしたトラクターがあった。正面には動物の顔を模した装飾が施されていて、後ろには牽引式のトレーラーが付いている。そしてキュルルが運転席に乗り込むと、腕のラッキービーストがこう言った。
腕ラッキー「運転席ノぱねるニ僕ヲカザシテミテ。」
キュルルが言われた通りにすると、トラクターのエンジンがかかった。するとチーター達が話しかけてきた。
チーター「ねえあなた達、一回だけじゃ物足りないでしょ?今度はいつ勝負する?」
プロング「私達なら今すぐでも構わないぞ。」
キュルル「ごめんね、僕達、おうちを探さなきゃならないんだ。」
キュルルはこれまでの事を説明した。しかしチーター達も、キュルルが言うようなおうちに心当たりはないそうだ。そしてまた旅を続けるため、チーター達とはここでお別れする事となった。
チーター「それじゃあね。あと、あの…、その…。」
面と向かってお礼を言うことに慣れていないためチーターが言い淀んでいると、隣のプロングホーンがこう言った。
プロング「いろいろ世話になったな、ありがとう!」
チーター「それ私のセリフ〜!」
G「ホント、感謝してるぜ!」
キュルル「ううん、元はと言えば、僕たちが邪魔しちゃったからだし。それに凄い勝負だったよ、これ見て!」
そう言って、キュルルはロードランナーに絵を手渡した。そこには荒野で競争しているプロングホーンとチーターが描かれていた。
プロング「おお〜、我等か。」
チーター「素敵じゃない…ってちょっと待って、なんでプロングホーンが前にいるのよ!」
チーターにとって、プロングホーンが左側に描かれているのが気に食わなかったらしい。
カラカル「そっか、あの線ってこの2人だったのね。」
キュルル「うん、速く動くものってああ見えるからね。さっきの勝負を見て気付いたんだ。」
G「…なあおい、私は?えーっと、あれ?」
絵をしげしげと見つめながらあからさまに動揺しているロードランナーを見て、キュルルが得意げな顔をした。
キュルル「絵をお日様にかざしてみて!」
言われた通りにロードランナーが絵を掲げてじっとしていると、2人の隣で走るサーバル、その後ろから車で追いかけるキュルル、そしてカラカルを抱えながら空を飛んでいるロードランナーの絵が浮かび上がってきた。
キュルル「面白いでしょ。お日様に当ててると、描いた絵が出てくるペンを使ったんだ。」
G「なんだよっ、びっくりさせやがってぇ!」
そうしてみんなで笑い合ったあと、3人は走り去っていった。そしてキュルル達も、トラクターに乗って出発した。
サーバル「元気な3人だったね。」
するとトレーラーに腰掛けていたカラカルが、屋根に座っているサーバルを見上げた。
カラカル「あんたも少し元気になったみたいでよかったじゃない。」
サーバル「うん、心配かけてごめんね。」
腕ラッキー「コレニ記録サレテイル次ノ目的地マデ、自動デ運転デキルヨ。安全運転デ行クカラ、ユックリシテテイイヨ。」
キュルル「そう、なん、だ…。」
トラクターの程よい揺れにお日様の光、さらにかけっこでの疲れもあり、キュルルの瞼はすでに重くなっていて、もうラッキーの言葉に反応する気力もなかった。
キュルル『サーバル、元気が出てきてよかった。…そういえば、今頃ビーストはどこでなにをしているんだろう…。』
そしてキュルルは運転席で眠り始めた。
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