◉位置について!

キュルル達は、腕ラッキーの指定した場所にやってきた。ここはヒトがいた時代サーキット場として使われていた所だが、長い時の流れとともにかつての道路は失われ、今では岩の上にうっすらと跡が残っているだけであった。


そこに止められていた一台のパークのスタッフカーの前で、キュルルがみんなにかけっこの説明をした。


キュルル「それでは改めてルールの説明をします。今回はカラカル、サーバル、チーターさんと、ロードランナーさん、プロングホーンさんの二つのチームに分かれてかけっこをしたいと思います。それぞれ決められた位置に立って、この木の棒を渡されたら、それをしっかりと持って走ってください。」


そして地面に引かれた線を指差した。

キュルル「ここからスタートして、このコースを一周して、より早くここまで戻ってきた方の勝ちとします。

僕はラッキーの運転するこの車で追いかけます。走り終わったらこれに乗ってください。歩かなくても応援ができます。」


プロング「そちらが3人、こちらが2人…、こんなやり方もあるのか、興味深いな…。」


チーターは腰に手を当て、そっぽを向いている。

チーター「私一人でも全っ然問題ないんだけど、この子達も一緒に走りたいって言うから仕方なくよ!」


素直に対等な勝負方法が見つかった、とか言い方はあるのに、これがプライドの厄介なところだろう。


プロング『…なるほど、こうして体力のバランスをとっているのだな…。』


それがチーターの強がりである事はすぐに分かったが、プロングホーンはあえて口に出さずにこう言った。

プロング「面白い。チーター、いい勝負ができそうじゃないか!」


プロングホーンがニヤリと笑った。その目には闘志がみなぎっている。先程とは打って変わってとても楽しそうだ。

チーター「元気そうね…。ふん、やめるんなら今のうちよ。」


プロング「ワクワクしてきたぞ!それと…。」


チーター「?」


プロング「また一緒に走れて嬉しいぞ、ありがとう!」


そう言って彼女は、弾けるような満面の笑みを浮かべた。するとチーターは、顔を真っ赤にしながら叫んだ。

チーター「べっ、べつにあんたのためじゃないわっ!このままじゃ納得いかないだけ…、もう一度勝って、私が地上最速だってハッキリさせてやるんだからっ‼︎」



キュルル「それでは、みんなそれぞれ、自分の位置についてくださーい!」


このキュルルの合図で、第一走者であるカラカルとロードランナー以外のフレンズは移動を始めた。そして少しうつむきながらそこへと向かうサーバルに、みんなが声をかけた。

チーター「さっきからなにしょげてるの?下ばっかり見てたら走れないわよ!」


プロング「うむ!昨日は今日を走る糧、今日は明日への道だ。振り向いてばかりいないで走り出せ!」


G「終わってから『本気じゃなかった〜。』とは言わせないぜ!」


カラカル「サーバル、気持ちは分かるけど、ここは一旦かけっこに集中して!」


サーバル『スタートラインに立ったら、全力で…。』

サーバルは、プロングホーンが言っていた言葉を思い出した。参加するのなら、いい加減な気持ちで臨むわけにはいかない。ひとまずかけっこが終わるまで、気持ちを切り替える事にした。

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