かけっこ編
◉衝突!
翌朝、キュルル達はゴツゴツとした岩山の並ぶ荒野を歩いていた。周りは見渡す限りほぼ茶色の大地、剥き出しの地面と岩山の他には、木や草がまばらに生えているだけのただっぴろい所だ。そして一本の曲がりくねった道が延々と続いている。
相変わらずサーバルは元気がない。いつもなら真っ先に駆け出して先頭を歩いてゆくのだが、今はしょげながらとぼとぼとキュルル達の後ろをついてきている。
さすがに心配になったキュルルは、カラカルに耳打ちした。
キュルル「ねえカラカル、サーバル、大丈夫かな…。どうしたらいいの?」
カラカル「うん…、これ一発で元気になるっ、て言葉はないわ。ヘタに元気付けようとするのは絶対ダメ、こうゆう事は、本人が少しずつ気持ちの整理をしてゆくしかないの。
…今のあんたもそうでしょ?気になるだろうけど、しばらくそっとしといてあげて。」
キュルル「あ…、うん、分かった。難しい事聞いちゃってゴメン、カラカルだって辛いのに。」
カラカル「…まあ、平気じゃないわね…。そういえば、この辺りの絵もあるの?」
キュルル「う〜ん。色からすると、これだと思うんだけど…。」
そう言って、キュルルが開いたスケッチブックのページには、茶色い背景に空、そして中央にゴチャっとした線の塊が描かれていた。
キュルル「この線、一体なんなんだろう?」
カラカル「フレンズ…には見えないわね。竜巻とか?」
すると警告音と共に、キュルルの左腕のラッキービーストがこう言った。
腕ラッキー「注意、注意!凄イすぴーどデ近ヅイテクルふれんずガイルヨ。」
キュルル「え?」
ドドドドドド…。
何やら音が迫ってくる。するとキュルル達の後ろから、大量の土煙を巻き上げながら2人のフレンズが物凄い速さで向かってきた。
2人は寸前でキュルル達に気付きなんとか正面衝突は避けたが、1人はバランスを崩して派手に地面を転がった。
キュルル達は風圧に吹き飛ばされ尻餅をついた。やがて、あたりをもうもうと覆っていた土煙が晴れてきた。
サーバル「ナニ⁉︎何が起きたの⁉︎」
カラカル「いきなり何⁉︎危ないじゃない!」
キュルル「ぷはー、ビックリしたぁ…。」
それからキュルルは立ち上がり、うつ伏せに倒れているフレンズに駆け寄ると、心配そうに声をかけた。
キュルル「あの〜、大丈夫ですか…?」
?「不覚…、あいたたたた…。」
そう言ってそのフレンズは立ち上がった。
その子はオレンジと白の混じったおかっぱのようなショートヘアで、とんがった耳をしていて、頭には曲がった黒い2本の角が生えていて、手には薄手の黒い手袋をはめている。そして白い体操服の上にオレンジ色のジャージを羽織り、下はベージュ色のブルマと靴下、それと運動靴を履いている。
その子は体からパッパッと土を払うと、キュルルに向き直った。
?「やあ、すまない。怪我はないか?」
キュルル「大丈夫です。え〜と、君は…?」
腕ラッキー「プロングホーンダネ。トッテモ足ガ速クテ、最高時速ハ90㎞。草食動物ノ中デ一番速インダ。」
最速と聞いて、キュルルは目を輝かせた。
キュルル「そうなの⁉︎凄い…!」
?「プロングホーン様〜!!!」
空から、誰かの叫び声が近づいてくる。そしてキュルルが上を見上げると、1人の鳥のフレンズが、慌てた様子で舞い降りてきた。
その子は胸にBeeP!と書かれた、胴体部分が水色、腕部分が青色、首回りが黄色の半袖シャツを着ていて、下は灰色のスパッツに白いソックスと運動靴を履いていて、左手首に水色の腕輪をつけている。髪型は灰色のショートヘア、もみあげを白でふちどられた青いリボンで結んでいて、両耳の上に羽が付いていて、黒い前髪に7つの星形の模様がある。
腕ラッキー「アレハG(グレーター)・ロードランナーダネ。飛ブコトモデキルケド、走ルノガ得意デ時速40㎞デ走レルンダ。」
キュルル「わあ、じゃああの子もかけっこが速いんだね!」
その子は大慌てでプロングホーンに駆け寄った。
G「プロングホーン様、大丈夫ですかっ⁉︎」
プロング「ああ、心配ない。ちょっと転んだだけだ。」
?「アーハッハッハ‼︎」
すると先程走り去っていったフレンズが、高笑いしながらやってきた。その子は黄色のロングヘアーと、先の尖った小さな耳をしていて、額には鳥の顔を正面から見たような模様がある。黄色い瞳に吊り上がった目をしていて、よく見ると上瞼に紫のアイシャドウがかかっている。服装は半袖の白いシャツと黄色地に豹柄模様のアームカバー、ネクタイ、ミニスカート、ニーソックスと白い靴を履いていて、お尻からは斑点と縞のついたの長い尻尾が生えている。
腕ラッキー「アレハチーター。最高時速ハ120㎞、地上最速ノふれんずダヨ。」
キュルル「地上最速!プロングホーンさんより速いんだね!」
チーター「これで分かったでしょ?地上最速はこの私、チーター様よっ!これに懲りたら、もうつきまとわないでちょうだい!」
G「待てよ!今のはナシだ、もう一回…。」
チーター「約束を忘れたわけじゃないわよねぇ、腰巾着?ま、どうしてもって言うんなら考えてあげなくもないわ。じゃあね〜。」
そう言うと、チーターは派手に土煙を巻き上げながら、あっという間に走り去ってしまった。
ロードランナーは拳を握りしめ、悔しそうに歯軋りをした。
G「くっそぅ…あんにゃろう…!」
プロング「やめるんだロードランナー。」
G「だって、プロングホーン様…!」
するとプロングホーンはロードランナーの顔を両手でそっと包んだ。
プロング「約束は約束だ。こんな結果になったのは残念だが、受け入れねばならん。」
それはまるで、ロードランナーだけでなく自分にも言い聞かせているかのようだった。冷静な口調ながらも、言葉の端々から無念さが滲み出ている。そして体を震わせながらうつむいているロードランナーをじっと見つめた後、彼女は数歩後ずさって悲しげな笑みを浮かべた。
プロング「私はちょっと向こうで一休みしてくるよ、くれぐれも気に病むなよ!」
そう言って、プロングホーンは岩山の向こうへと走り去っていった。ロードランナーは何か言いたそうにその後ろ姿を見つめていたが、プロングホーンの姿が見えなくなった途端、ギロッともの凄い目で睨みながら、キュルル達に食ってかかった。
G「お・ま・え・らぁっ…、なんて事してくれたんだ!せっかくのっ…、せっかくの2人の勝負を邪魔するなんて‼︎どうしてくれるんだ…あ?」
顔を真っ赤にしながら大声で怒鳴っていたロードランナーが、サーバルの様子に気付いて固まった。彼女の目から、大粒の涙がポロポロとこぼれている。
サーバル「…ごめんなさいっ…!」
そう叫ぶと、サーバルは突然逃げ出した。
それを見たカラカルは、さっとキュルルを抱き抱えた。
カラカル「ゴメン、あの子を追っかけなきゃならないから!待ちなさい、サーバル!」
そして慌ててサーバルを追いかけた。
呆気に取られたロードランナーはしばらくそのまま固まっていたが、ハッと我に返ると怒鳴りながら3人の跡を追いかけた。
G「まっ、待ちやがれ!まだ話は終わってないぞっ‼︎」
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