ジャングル編

◉でかい口(ビッグマウス)

ビーストは、伸び放題の草を踏みつけながら鬱蒼と生い茂るジャングルの中を進んでいた。時折あたりを見回したり鼻をひくつかせながら進んでゆくと、向こうからフレンズの匂いとセルリアンの気配がした。あれが追いかけていたものかまでは分からなかったが、彼女は駆け足でそこへと向かった。


木々がひらけた所に、ジャングルのフレンズ達の遊び場となっている広場があった。綺麗に掃除されていて、落ち葉ひとつ落ちていない。暖かな日差しが降り注ぎ、キラキラした泉が湧き出ていて、あたりには心地よい風が吹いている。


その泉のそばで、1人のフレンズが真っ青な顔をしながら横たわっていた。

その子は薄い緑色の髪をポニーテールでまとめていて、2房の前髪は口を開けたワニを横から見たような形状をしている。上は暗い緑色の大きく胸元の空いた鰐皮のライダージャケット、その袖にはトゲが生えている。下は紺色のダメージジーンズ、そしてジャケットと同じ色のブーツを履いていて、お尻から鱗で覆われた太くて長い尻尾が生えている。


イリエワニ「うう…、頭が重い…。明日は大切な日だってのに、急にどうしたっていうんだ…。」

そうしているうちに、その子は気絶するように眠ってしまった。


すると彼女の髪が黒く変色し、ざわざわと蠢き始め、どんどん膨れ上がっていった。それはまるで大きなワニの頭のような形になると、大口を開けながら彼女を一気に呑み込もうと迫ってきた。


ガッチイィィン!

しかしすんでのところでビーストがイリエワニを抱き抱え、なんとか大顎から助け出した。しかし鋭い牙がビーストの右腕を掠めた。そのあまりの衝撃に右腕は痺れてしまい、うまく動かせなくなった。

彼女はイリエワニを茂みに隠したが、間髪入れずワニ口セルリアンが飛びかかってきた。


バキャン!

なんとか身をかわしつつ左の爪を牙に見舞ったが、弾かれてしまった上にこちらの腕まで痺れてしまった。


ガチン!ボキィ!グワシャ!

ワニ口は、木も泉も地面もお構いなしに次々と噛み砕いてゆく。ビーストは転がったり飛び回ったりしながら、必死にその攻撃をかわした。


ドンッ!

すると背中に大きな岩が当たった。知らないうちに、まんまと追い詰められてしまったのだ。すかさずワニ口が、大きな牙をギラつかせ、大口を開けながら飛びかかってきた。


とっさにビーストは振り向くと、まだ痺れの残る両腕を一気に大岩へと突き刺し、思い切り力をこめた。すると頭に紋章が輝き、体が白い輝きで覆われた。


ビースト「ガアァァァッ‼︎」

そして咆哮と共に目一杯体をのけぞらせると、それを持ち上げてワニ口目掛けて力任せに投げつけた。


大口に巨大な岩を投げ込まれ、一瞬動きが止まったが…、

バキャァァン!

ワニ口は大顎に力を込め、瞬時に岩を噛み砕いた。


しかしビーストは、その一瞬の隙を逃さなかった。すかさずワニ口の下顎目掛けて弾丸のような勢いで飛びかかり、両手に渾身の力を込めて爪を突き刺した。そしてそのまま下に振り下ろし、相手を真っ二つに切り裂いた。


ワニ口「ギョロロロロー!!!」

すると絶叫と共にワニ口セルリアンは砕け散った。


ビーストの腕はまだピリピリしている。それをさすっていると、どこからか小さな声がした。

?「ちっくしょ〜!だがな、あの青いボウヤに、ボクはタネをまいた!止められるものなら止めてみるんだなぁ!」


ビーストはあたりを見回したが、声の主の姿は見つける事はできなかった。まだワニ口のかけらも消え去っておらず、セルリアンの気配を探るのも難しい。

ビースト『青いボウヤ…、はあの見慣れない子の事か?でもタネってなんだ…?』


ビーストが首を傾げていると、茂みの中から声がした。

イリエワニ「う…、う〜ん…。」


どうやらワニの子が目を覚ましたらしい。しかも周りから、3人のフレンズの気配が近づいてきた。

もう少しここを探索したかったが、こうなっては仕方がない。ビーストは高々と跳躍すると、樹上へと消えていった。


後に残ったのは、もはや先程までの面影のかけらもない、破壊され尽くした広場だった。

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