◉邂逅

キュルル一行は別のちほー目指して歩き始めた。

センザンコウ「ジャングルにいるヒト…、そういえば聞いた事があります。なんでも森の奥で暮らしているとか。キュルルさんはおうちも探しているんでしたよね。何か手がかりはあるんですか?」


キュルル「これに描かれた場所を探してるんだ。」


そう言ってキュルルがスケッチブックを手渡すと、センザンコウはパラパラと紙をめくりはじめた。するとその手が、風車が描かれている絵のページで止まった。

センザンコウ「これに似た場所に心当たりがあります。そこへ行きましょう!」


それを聞いたキュルル達は、ひとまずセンザンコウについて行く事にした。その道すがら、キュルルは2人にビーストについて尋ねてみた。

キュルル「2人はビーストがどんな子(フレンズ)か知ってるの?」


センザンコウ「私達も直接会った事はないので、噂以上の事は分かりません。ですが、ビーストが壊したという現場を見た事はあります。」


アルマジロ「大きな木が真っ二つになってたり地面が割れてたりで、も〜むちゃくちゃだったよ。並のパワーじゃないよね!」


キュルル「わぁ〜、やっぱり凄いんだなぁ〜!」


そんなキラキラと目を輝かせているキュルルを見て、思わずカラカルは口を挟んだ。

カラカル「ねえキュルル…、そんなにビーストの事が気になるの?」


するとキュルルは、ニコニコしながら元気よく答えた。

キュルル「うん!気になるし、会ってみたい!」


カラカル「……ふ〜ん…。」

それを聞いたカラカルは、なんでもない風を装いつつも心の中で膨れっ面をしていた。

カラカル『ああもう!どーしてアンタは、そんな危ないやつばっかり気にかけるのよっ⁉︎』


やがて、大きな四角い建物が見えてきた。2階建てで全体にトラの模様があしらわれていて、上の階には目のような2つの丸い窓があり、口に当たる所から細長い道がどこまでも伸びている。


サーバル「こんな所があったんだ…。」


キュルル「これもヒトが作ったのかな…、でも絵の場所とは違うよ?」


センザンコウ「ご安心を。向こうを見てください。」


それの隣には丘があり、そこには沢山の石でできた建物が並んでいる廃墟があった。スケッチブックの絵と見比べてみると、屋根から風車がなくなっていたり階段が草地になっていたりしているが、どうやらこの場所で間違いないようだ。


キュルル「だいぶ変わってるけど、たぶんここみたい。」


サーバル「やったね!それでどう、何か思い出せた?」


キュルル「うーん…、おうちじゃないみたい。でも…。」


そう言って、キュルルは四角い建物の方を見た。その口のような所に、何かが止まっているのが見える。

それはモノレールだった。全体が黄色く塗られていて、まだら模様がついており、先頭の運転席は猫の顔のペイントが施されていて、屋根には大きな耳をあしらった飾りが付いている。


キュルル「…あれに乗ってここまで来た気がする。」


カラカル「そうなの⁉︎それじゃあ行ってみましょうよ。」


一行は建物の中へと入っていった。そこには切符売り場と自動改札口が並んでいて、その奥に上の階へと続く階段があった。


サーバル「なんなんだろうね、これ。」

みんなでそれらを物珍しげに眺めていると、サーバルとカラカルの耳がピクンと動いた。


サーバル「何か来る…!」

カラカル「あの丘の上!」


そちらを見ると、廃墟の陰から巨大なセルリアンが現れ、こちらに迫ってきた。今度のやつはデジカメ型よりも一回り大きく、テレビカメラの形をした頭に4本のドリル状の足がついている。


キュルル「セルリアン⁉︎」

サーバル「大変、ヌシだよ!」

カラカル「あれと戦うのはムリ…、逃げるわよ!」


すると、センザンコウとアルマジロが出入り口に立ち塞がった。

センザンコウ「私達があいつをひきつけます。その間に皆さんは逃げてください!」


キュルル「そんなっ…、一緒に行こうよ!」


アルマジロ「助けてくれたお礼だよ!私達なら大丈夫、どんな攻撃でも跳ね返しちゃうから!」


ズズンッ!

セルリアンが体当たりしてきて、建物が大きく揺れた。壁が崩れ、天井から瓦礫が降ってきた。それから狭い出入り口に無理矢理足を突っ込むと、力任せにこじ開けようとした。

すると2人はセルリアンの注意を引くために、その足にしがみついた。


センザンコウ「早く!」

アルマジロ「潰されちゃうよ!」


サーバル「ごめん…、ありがとう!」

カラカル「すまないわね…。キュルル、急いで!」

3人は後ろ髪を引かれる思いで階段を駆け上がった。


キュルル『…オオセンザンコウさん、オオアルマジロさん、ありがとう!もしまた会えたら僕…、お礼になんでもするよっ!だから…、だから無事でいて‼︎』


2階に上がると、目の前にモノレールが止まっていた。運転席には、海賊の格好をしたラッキービーストが乗っている。

サーバルがドアに駆け寄ったが、閉まっていて入れない。


サーバル「入れないよ、どうしよう⁉︎」

カラカル「なら力ずくでっ!」


カラカルが爪を構えたが、キュルルが止めた。

キュルル「待って!もしかして…。」


キュルルがドアに書かれた手ひらマークに手を当ててみると、シャッと勢いよく扉が開いた。そして運転席から声がした。


ラッキービースト「アヅアエン行キものれーるハ、マモナク発車シマス。オ乗リノ方ハゴ注意クダサイ。」


サーバル「え、ラッキーさん?」

カラカル「しゃべれたの⁉︎」

キュルル「とにかく乗ろう!」

3人がドタドタと車内に駆け込むと、天井の明かりがついた。


ラッキービースト「扉閉マリマース、ゴ注意クダサイ。…オ待タセシマシタ、発車シマース!」


アナウンスと共に扉が閉まり、モノレールが発車した。みるみるうちに後ろの建物が小さくなってゆく。


サーバル「動いた!」

カラカル「逃げられたの…?」


ドカーーン‼︎

3人「「「わあっ⁉︎」」」


なんとモノレールのすぐ後ろから、巨大セルリアンがレールを突き破って現れた。そしてレールに着地すると、すごい速さで追いかけてきた。


サーバル「すっごいジャンプだったね!」


カラカル「言ってる場合⁉︎追っかけてくるわよ〜!」


キュルル「これ、もっと速く走れないの⁉︎」


ラッキービースト「ムリダヨ。」


カラカル「頑張りなさいよ〜!」


ラッキービースト「ムリダヨ。」


そしてある程度距離が縮まったところで、セルリアンがまるでハエトリグモのように大きくジャンプし、モノレール目掛けて突っ込んできた。


3人「「「うわあああー!!!」」」


とっさに、キュルルは心の中でこう叫んだ。

キュルル『助けて、ビースト!!!』


?「グォオオオオー!」

ズガァァン‼︎

突然雄叫びが聞こえたかと思うと、白い光がセルリアン目掛けて飛び込んできた。よく見るとそれは、オレンジ色をしたフレンズだった。両腕に厳つい手枷をはめて、頭にはトラの模様の形をした紋章が輝いている。そしてその子の爪が、手首までセルリアンに深々と突き刺さっている。


セルリアン「ゴアオオオー!!!」

そして大きな叫び声と共にセルリアンは砕け散った。


サーバル「なにあれ…?」

カラカル「わかんない…。」

キュルル「カッコいい…!」


呆気に取られている3人の耳に、どこからともなく声が聞こえてきた。

?「あれはビースト!早く逃げないとお前らも喰われるぞ!」


キュルル「え?」

サーバル「なに、今の声?」

カラカル「え、アンタが言ったんじゃないの?」

あたりを見回しても誰もいない。謎の声に3人が首を傾げていると、サーバルの耳がピクンと動いた。


サーバル「ん?なんだろう、あれ?」


その視線の先には、凄いスピードでモノレールに追いすがる影…四つん這いで走るビーストの姿があった。しかし距離が離れているうえ地面の色と重なって、どんな格好なのかはっきりとは分からない。


カラカル「あいつが…ビースト?」


キュルル達は窓に張り付いてその子を見つめた。

するとビーストは、あれよあれよという間にモノレールを追い越して、そのまま見えなくなってしまった。

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