第37話 妖精の森の動物たち

この日、僕は森の中で十分な食べ物を見つけた。僕が今まで見たこともない不思議なナッツや果物などだ。僕はそれらを食べるのをためらったが、妖精国の空気を吸って大丈夫なのだから、その食物も大丈夫なはずだ、と強引に結論した。僕は自分の考えが正しいことに気づき、しかも結果は僕が期待していたよりずっと良かった。なぜならその食物は僕の飢えを満たしてくれただけでなく、僕の感覚が、周囲を取り巻く妖精界の事物とよりもっと完全な関係を結べるような方向に働きかけてくれたからだ。件の人の姿をした者たちはより濃密で明瞭な、もしこう言って良いのなら、はっきりと目に見えるような姿で現れた。僕はどちらにゆけばよいか迷った時、より良く向かうべき方角がわかるようになった。またある程度鳥たちの歌が意味することを、鳥たちの言葉が表す語自体はわからないけれど、人々が目にする風景を感知できるように、感じとれるようになり出した。時には、これには自分でも驚いたが、僕は注意深く耳を傾けることによって、まるで当たり前のように、2匹の栗鼠たちや猿たちの間で交わされる話を聞き取ることができたのだ!! 彼らの話題は各々の生活や小さい獣たちの必需品などを除いて取り立てて興味深いものではなかった。曰く、一番良いナッツは近隣のどこで見つかるのか、誰が実を一番キレイに割れるのか、誰が一番冬の蓄えを貯め込んでいるのか、など。だが彼らはその蓄えがどこにあるのかだけは絶対に話さなかった。彼らの話は僕たちありふれた人間たちが話すことと、大した違いはなかった。何種類か、まったく会話を聴き取れない動物たちがおり、僕が思うに彼らは、なにか大変驚いたりといった動転した時以外は話さないのだろう。ネズミは話したが、ハリネズミは非常に無感動に見えた。そして僕は地上にいるモグラたちに何度か出会ったが、彼らは僕の聞いていた限りでは一言も話さなかった。森に猛獣は全然いなかった。少なくとも、僕は山猫より大きな肉食動物を一匹も見なかった。蛇は沢山いた。僕はそれらすべてが無害だとは思わないけれども、僕を噛む奴はいなかった。

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