第27話 光の輪舞曲

森の他の場所では、樹木群の枝葉を取り巻くすべてが見事な色彩の蛍たちによる空中の舞踏ーあちらまたこちらへと高速で駆け、旋回し、屈曲し、交差し、再交錯し、それらあらゆる運動の錯綜を絡み合わせ、織り合わせたーによって鮮やかに照らし出されていた。あちらこちらで、巨大な森の全体が放射された燐光によって輝いていた。夥しい根が地中を通るその道を、寸分違わず、微かな光が通り抜けてゆく、そしてあらゆる小枝、あらゆる葉のあらゆる葉脈が、淡い炎のように輝くひとつの帯となった。

ところでこの森を通り抜けている間ずっと、僕の四方から僕と同じような大きさ、姿形をした別の人影たちが少し離れたところを動き回っているような感じに僕はとらわれていた。だがそれらの誰も、僕は未だはっきり見分けることができなかった。月は天空高く、木々の間から非常に潤沢な光が降り注いでいたにもかかわらず! しかも彼女の煌きは、月が漸く半月であるくらいだというのに、異常なほど明るく、良好な視野を与えていた。しかしながら、僕は絶えずこのように想像していた。人影はどの向きからも見えているのだが、それは彼らに対して僕の視線が外れている時だけなのだ。そして僕の目がまともに彼らに向いた瞬間、人影は見えなくなる…即ち自身を森の風景内にあるものへと擬態させているのだ、と。しかし『何かが居る』というこの感覚を除くと、森には人間に類するようなものはまったくいないように見えた。というのも僕の視線はたびたび、僕が人の形をしているのではないか?…と思い込んだ物体に落ちたが、僕はすぐさま自分があらゆるまったく惑わされていることに気づいた。つまり僕がそのものに視線を凝らせた途端、それは明らかにただの茂みや木、岩などであるとわかるのだった。

まもなくある漠然とした不快感が僕に取り憑いた。その不快感は時に緩んだりしつつも、次第に増していった。まるである邪悪な何かが僕の近くをさまよい歩いていて、しばしばもっと近くなったり離れたりしながらも、静かに接近しつつあるかのようだった。

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