第26話 土蛍の花火
なぜなら甲虫は土蛍を遠目に捉えると、草の茂みや苔の下生えを通って土蛍にのしかかり、その弱々しい抵抗をものともせず、土蛍を持ち去ってしまう。甲虫の目的はなんなのだろうと不思議に思った僕は、甲虫たちの一匹を観察し、それによって僕はこのことが説明のしようがない、ということに気づいた。しかし妖精の国で起こることを説明しようとするのは無益なことだ。そこを旅する人はまもなく、「説明しよう」と考えること自体を忘れてゆくようになる。そしてすべてのことをあるがままに受けとるようになるのだ。いつでも驚異のただ中にあり、どんなことにも驚くことのない子供のように。
僕が目にしたのは次のようなことだ。どの場所でも地面の上の至るところに、小さい、暗い見かけで言うなら何か土塊のように見えるものが横たわっており、その大きさは栗の実くらいだった。甲虫たちはそれら土くれをペアになって探し、どちらかがそれを見つけると、一匹はそれを見張るためそこにとどまり、もう一匹は急いで土蛍を見つけにゆくのだ。僕が思うに彼らの間ではなんらかの合図によってだが、土蛍を探す甲虫は土蛍を探し当てたらすぐまた彼のペアを見つけた。甲虫たちは土蛍を捕まえると、その発光する尾にその暗色の塊を押し当てるのだ。その時、見よ! 甲虫は土蛍を打ち上げ花火のように空へ発射するのだ!! しかしながらほとんどの花火は、一番高い樹木の高度までは達しなかったが。まさしく花火のように、それは空中で爆散し、さまざまな色合いの華麗な閃光をシャワーのように振り撒いた。黄金と赤、紫と緑、青と薔薇色の光輝、それらが影に包まれた木々の頭部の樹下を、樹海の木々が柱状になった幹の間を横切ったり互いに交錯したりした。甲虫たちは、僕が観察した限り、決して同じ土蛍を二度使わなかったが、花火で空に打ち上げられても明らかに無傷な土蛍を放してやっていた。
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