第24話 陰険な小鬼たち

「危機が最高潮である時、救いもまた最も近い」

  サー・アルディンガーの歌


第四章 妖精の森 夜


この時になると、我が女御は僕がすぐ発つべきだと大変気を揉んでいた。なので温かな母娘のもてなしに厚く感謝して僕は旅立ち、あの小庭園を通り抜けて森へと向かった。庭園にいた花たちのいくつかは森にも散在し、道沿いのそこいらに繁茂していた。しかしすぐに木々が非常に分厚くなり、花々をその陰に入れてしまった。僕は道の両側に茂る背の高い白ユリのいくつかが、周囲の緑との対照によって引き立てられ、眩い大きな白い花を咲かせているのに気づいた。今はもう十分に暗くなっていたので、僕はあらゆる花が、それ自体が放つ光によって輝いているのを見ることができた。実際に僕が花々を見ることができたのは、この各々の内部から発する光、昼間のように共通するひとつの光源によって反射されることのない、特別な輝きによってだったのだ。この光はその草花自体をなんとか照らすだけで、周囲には非常に弱々しい影を投げかけたり、あるいは隣り合うものをその花が持つ独自の色合いで、ほんのりと染め上げるくらいの強さしかなかった。先に言ったユリから、ホタルブクロから、ジギタリスから、あらゆる釣り鐘を持つ花々から、奇妙な小さい人影がぬっと頭を突き出し、僕を覗き込み、また引っ込んだ。彼らはカタツムリが貝殻に住むように、花々に棲んでいるように見えた。だが僕には奴らのいく匹かは侵入者で、地表や土中を蠢く植物に棲んでいる、地の精ないし小鬼の妖精であるのがわかった。アルム属のユリのがく盃から、でっかい頭と奇怪な顔をした生き物がビックリ箱のように飛び出し、僕にしかめっ面をして見せたり、がくをゆっくり登ると盃の端っこをそろりとまたぎ、僕にぷっと水を吹きかけ、また突然、海貝の貝殻に住む小蟹たちのように滑りながら中に戻っていった。

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