第23話 純真なデイジーの精
しかし猫属の呪いに取り憑かれたかのごとく、狂暴なる暴風そのものと化して、このあわれなケモノは抑えつける妖精どもを振りほどいた! 庭園を疾走し、塀を通り抜け、妖精たちが追いかけるよりも速く走り去る。「……まあ気にしない気にしない。おいらたちはまたあの子を見つけるさ。んでその時までには猫ちゃん、ピッカピカな火花の蓄えを貯め込んでるにちがいないね、ひゃっほーい!!」それから妖精どもはいくつも新しいイタズラをした後で、旅立っていった。
だが僕が、これら陽気な妖精たちのけれん味たっぷりなお愉しみについて、長々話しつづけることもあるまい。今や、彼ら彼女らのしきたりや習性は非常によく世界に知られ、目撃した人たちによって頻繁に記述されている。なので、それに僕が残した観察記録すべてを付け加えるのは、ただ自己満足に耽るだけになってしまうだろう。けれども、僕はこれを読む人たちが自分自身の目で、これら妖精たちを見てほしいと望まずにはいられない。とりわけ僕が見てほしい、と切望するのはデイジーの妖精だ。ちっちゃくぽっちゃりした、まるい瞳のかわいい子! 彼のまなざしに宿る無垢な信頼のなんという愛らしさよ‼ いちばん悪戯好きな妖精たちでさえ彼をからかったりしないのだ。デイジーは妖精たちのどんな集まりにも入っていない、まったく素朴で小さな田舎者でしかないというのに。彼はひとりでふらふら歩き回り、いろんなものを見る。両手を小さなポケットに入れ、白いナイトキャップをかぶり、ああその可愛らしさよ! デイジーは僕がこの後に見た他の数多い野花の精たちほど美しくはないが、そのまなざしと自信なさげなそぶりは本当に可愛く、愛らしいのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます