第20話 さくら草のお葬式

しかし僕の注意はなによりもまず、バンガローの近くにいる妖精たちの集まりに魅きつけられた。妖精たちは一緒に今にも死にそうなさくら草について話し合っていた。彼らは唄いながら話し、その会話は次のような歌になっていた。


かわいそうなさくら草は死んじゃった

あたしたちが生まれる前に

彼女は花嫁のようにやって来た

雪の日の朝に

花嫁ってなに?

雪ってなに?

ぜったい訊いちゃだめ

……わかんない

だれがさくら草のことを知らせてくれたの?

かわいいさくら草をこっちに

この子なしでは始まらないもの

ああ、なんて愛らしくキレイなの!!

こわがらないで、さくら草が来るわ

……あの子、ばかなの?


さくら草はもうすぐ来るわ

あんたたちはぜったいあの子を見られないよ

彼女は死ぬために家に還ったの

新しい年まで

スノードロップ!! 

あの子呼んでもなにもいいことないよ

さくら草はほんとやな奴

あたし噛みついてやる!


ああ、ポケットちゃんなんてことを!!

見なさい、あの子の首が折れちゃったわ

とーぜんの報いよ、ざまあ!

それにどうせもう死にかけだったじゃない

自分のハンモックに戻りな、あっちだよ!!

ひとりぼっちで揺られてなさい

だれもあんたと一緒に笑ってあげないよ

そうよ、だーれもね


さあ、それじゃあ悲しみましょっか!

ほら、さくら草の上から土をかぶせて 

さくら草、逝っちゃった

お花だけ遺して

ここに葉っぱがあるわ

あの子の上に載せてあげましょ

ハイ、じゃあ順ぐりに泣いて〜

やったのはポケットちゃんだけどね


もっと土深くに! ああ、かわいそうな仔!!

冬がやって来るでしょう

けど彼のつめたい手がこの子にとどくことはない……

あ、うまいこと言ったわ、アタシ

さくら草は埋葬されたわ、なんてキレイ!

よし、義務はおしまい!

じゃあ楽しみましょっか!!


そうして一斉にわらいながら、妖精たちはそのほとんどがバンガローの方へと飛び去った。

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