第19話 薔薇の妖精
薔薇の精は彼らが彼女の衣服を盗んだ、と激しく非難し、勇敢にもその財産を守ろうとした。
「あんたは薔薇の葉っぱの半分だって着れやしないじゃないか」と何人かが言うと、
「よけいなお世話!! あたしはあんたたちに葉っぱは渡さない、これはあたしのモノよ!!」
「すべては共益のためなのさあ!!」ひとりが言い、凹みのある大葉を抱えて逃げ去った。しかし薔薇の精は彼に後ろから跳びかかり、(彼女のなんと美しかったことか! まあ少々『応接間の貴婦人』風が鼻につくが)一回転しながら踵で逃げる彼を蹴とばして、彼女の大きな紅い葉を取り戻した。けれどもその間に20人もの妖精がちょうど同じくらい良い葉っぱを持ってあらゆる方角に走り去ってしまった。するとこのちっちゃな生きものは座り込み、泣き出した。それから、彼女の樹のお気に入りから、完璧なピンクのスノーストームの花びらを選び、枝から枝へと跳び移り、地団駄踏んだ。枝を揺らし、引っ張り、とうとうまたもう一度からりと泣き声を上げた後、バラの精はひときわ大きな葉っぱを選ぶと、笑いながら駆けてゆき、他の妖精たちの中へと彼女の舟を浮かばせたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます