第17話 妖精国のふしぎ

なぜなら家や衣服は、その住人や着用者と似通ってはいるが、直接の発声が持つチカラと同等の影響を与えることはできない。けれどもあなたは花と妖精の間に、言葉にはできないのにそれ自体が語りかけてくるかのような、ほとんど一体のようにも見える、奇妙な類似を見るだろう。すべての花々が妖精を持つのかどうか、僕には明白にはできない。すべての人間の男女に魂があるのかがわからないのと同様に。

かの女御と僕はもう少し話を続けた。僕は彼女がもたらす見聞に大変興味をそそられ、またその語られる際に彼女の用いる言葉遣いにも驚かされた。そうして見ると、妖精たちとの交流は悪くない教育であるように思えた。しかし娘が戻ってきて、トネリコの木が今まさに南西の方角に立ち去った知らせを伝えた。よってかの女御が思うには、僕がただちに出発して、東の方向に行ったかのように偽装すれば、トネリコと出くわす危険はないだろうということだった。

僕は小窓を見上げ、そこにトネリコの樹が立っていて、僕の目にはそれまでと同じに見えた。しかし僕はこの母娘が僕よりもよりよくわかっているのだと信じ、出発の準備をした。僕は財布を取り出したが、なんとその中は空っぽで僕は仰天した。女御は笑ってご自身に災いを引き寄せぬようなされ、なぜならお金はここではまったく用をなさぬものだから、と言った。またさらに僕が旅の中で出逢う人々の中には妖精だと見分けられない者たちもいるだろうが、その時にお金を渡そうなどとはせぬがよい、それ以上に彼らを怒らせることはないのだから、と。

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