第16話 妖精と花々

「彼らは花々の中に棲んでいるのですか?」

「あたしにゃわからない」彼女は答えた。「あたしなんぞにはわからない『何か』がそこには存在するようだね。時に花々と妖精は一斉に消滅する……あたしから見てさえ、彼らは密に繋がってる。……妖精たちはいつも彼らと似た花々−その名で彼らが呼ばれるところの花−と一緒に死ぬように見える。しかし妖精たちが新しく生まれた花々と共に蘇るのか、それともそれは新しい花々で新しい妖精たちなのか、あたしにはわからない。妖精たちには人間の男女と同じくらい、多様な性質があるけど、その一方で人間たちよりずっともっと移り気だ。ほんの30秒間に、20ものちがった表情があの子らのちいさな顔を横切ったりもするよ! あたしは時折、あの子らを観察するのが楽しみでね、でもあたしには決してあの子らの誰とも個人的な友誼を結ぶことはできないのさ。もしあたしが妖精たちのひとり話しかけたら、彼ないし彼女はあたしの顔を見上げる。……まるであたしには気にかける値打ちもないっていうように、ちっちゃく笑って走り去るのさ」ここで、彼女は突然思い出したように、低い声で娘に言った。「急いで行って、トネリコを見てきておくれ。奴がどの方角に向かうのかを」

ここで、ここでの観察と後々の経験から僕がたどり着くことができた結論を述べるとしよう。花々は妖精たちが去るから死ぬ。花々が死ぬから妖精たちが消滅するのではない。花々は言ってみれば妖精たちにとって、望む時に付け外しできる家、あるいは外殻なのだ。ちょうどあなたがある人の性質について、もし彼が彼固有の好みのようなものに従っているのなら、その人が建てた家のタイプからある手がかりを得ることができるように、あなたは花々を理解したと感じるまで観察することによって、妖精たちを目にすることなく、花を見ることによって、妖精たちのうちのある者について話すことができるだろう。なぜならちょうど花があなたに言うことは、妖精の顔・姿が言うことと同じなのだ。ただ人間の顔や姿の方が、花々よりもよりはっきりと表すというだけで。

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