第15話 野の妖精と庭の妖精
「奴が今いる所から敢えてもっと近づいてくることはないよ」彼女は答えた。「というのも小屋のあちらの四隅にいるオークの樹たちが、奴を引き裂いてしまうからね。彼らはあたしらの友だちなのさ。でも奴はあそこに立って、時々あたしらに恐ろしい顔をしてみせ、長い腕と指たちを伸ばして、あたしらを死ぬほど怖がらせようってする。そいつが奴のお好みのやり口でね。……どうか、今晩は奴の通り道を避けるようにしなさいよ」
「そういったことが、僕にわかるのでしょうか?」
「まだあたしにはなんとも言えない。あんたの中にどれほど妖精的な性質があるのかわからないからね。でもこれから、あたしの庭であんたが妖精たちを見つけられるかどうかを見てみたら、それがある程度のヒントにはなるだろうさ」
「花の妖精たちと同じように、樹の妖精もですか?」
「彼らは同じ種族なんだよ」彼女は答えた。「あんたらの国では主に若い、子供の花々のことを『妖精』と呼んでいるけどね。あいつらは、あいつらが言うところのノロマな連中をからかうのが何より大好きなのさ、たいがいの子供たちがそうであるようにね」
「だったらどうしてあなたは花の妖精たちをそんなに近づけるのですか? 彼らはあなたたちを困らせたりしないんですか?」
「いやいや、あいつらはとっても愉快だよ。大人たちのモノマネとか、まじめくさったのを茶化したりとかね! ときどきあいつらはあたしの目の前で演劇をまるまる一本演ったりもするよ。完全に落ち着いて、自信たっぷりにさ! だってあいつらはあたしを怖がっていないから。ただ劇が終わった途端、あの子らは弾けるようにちっちゃい笑い声を響かせる。まるで今まで真剣にやってたのがぜんぶ冗談だってみたいに。ただね、あたしがさっきまで話したのは『庭の妖精』についてだよ。あの子たちは『野の妖精』や『樹の妖精』たちよりはもっと教養があるしまともだ。もちろんあの子らは『野花の妖精』たちと近しい関係にある。しかしあの子らは彼らに庇護者ぶって、田舎の甥姪っ子にするみたいな態度をとるのさ。あいつらは世間知らずで人生をなんにもわかってない、ってね。けれどまあ、あの子らは時折、野の花々たちの優美さ単純さがうらやましくなるみたいだけどね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます