第14話 トネリコの手
ゆえに沈みゆく太陽が木々の隙間をぬって二人を照らした時、まともに陽光を浴びた二人の騎士たちは、一方は全身が光り輝いて見えた。そしてもう一方の全身は血のような紅色で真っ赤に輝いたのだ!
今、ここに至るまでのいきさつを話そう。サー・パーシヴァルは魔の淑女から逃れた後のことだ。彼はその時つるぎの握りの十字で心臓を強く打ち、さらに自身で太腿を裂いて(彼女から)逃走して、広大な樹海にたどり着いた。未だ癒えぬその過ちと負傷に苦しむ中、彼はハンノキの乙女に出会った。見目麗しさに、偽りの表情とまことしやかな言葉にあざむかれ、ついに彼は彼女の後についてみちびかれるままに――――。
ここで低い恐怖の叫びが我がレディ・ホスターから発せられ、僕の顔を本から上げさせた。そして僕はそのまま続きを読むことはなかったのだ。
「見て、あそこを!!」彼女が言う、「――彼の指を!!」
ちょうど僕が本を読んでいる間に、沈みゆく太陽は西方で積み重なった雲々裂け目を透して輝いていた。そして大きく捻れた手のような影が、指に分厚いでこぼこを付けているため、分かれていない手の部分より指たちの方がもっと幅広いそれが、小さな窓覆いの上をゆっくりと通り過ぎて、またゆっくり同じように反対の方へと戻っていった。
「あいつほとんど目覚めてるよ、母さん。それに今晩は普段よりずっと浅ましげね」
「静かに! 嬢やさん。わざわざ彼を今よりもっとわしらに怒らせることはないよ。すぐにでもなにかあって日没後の森に入らなくちゃならないかどうかもしれないんだからね」
「けれどあなた方は森の中にいる」と僕は言った。「どんなわけであなた方はここでは安全なのですか?」
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