第12話 大胆、あるいは無謀なる決意

僕が森の木々たちの『ふつうでないざわめき』がどうやって彼女にわかるのかと訊ねると、彼女は答えて……、

「ざわついた木々が『見ている』傍では、そこにいる犬は不幸になるし、それに白うさぎの目と耳は普段より真っ赤で、なにか楽しいことがあるみたいに跳ね回る。もし家に猫がいたら、彼女は『逆さ向き』になっちまうだろうね、というのも若い妖精たちが雌猫のしっぽから、いばらの棘を使って火花を引き出してしまうから。そして彼女には妖精たちがやって来るのがわかるのさ、あたしにもわかるが、それは彼女とは別のやり方になるね」

まさにこの時、いっぴきの灰色猫が悪魔のように疾走し、壁の穴の中へと消えていった。

「ほぉら、あたしが言ったとおりさ!」

と婦人が言う。

「ですが、一体『とねりこ』とは何なのですか?」僕は言って、もう一度話題を戻した。しかしここで僕が朝に会った、あの若い女性が家に入ってきた。微笑みが母と娘の間で交わされ、すぐに娘は母を手伝って、こまごました家事に取りかかった。「私はここに、日暮れまで居させていただければと思っています」僕は言った。「それから、私の旅をつづけるつもりです。……あなた方が私の滞在をゆるしてくださるならですが」

「あんたの好きなだけ居られるとよいよ、ただ一晩とどまった方がいいがね、これから、森の危険を冒してゆくよりは。あんたはどこへ行くところなんだい?」

「いえ、私にはわかりません」僕は答えた。「でも僕は、見られるものはすべて見ておきたい。だから、そういうわけで僕は、ちょうど陽が沈んだ時に発つつもりです」「あんたは大胆な若者だね、もしもあんたがやろうとしていることに意図を抱いてのことなら。でもなんの考えもないんだったら、無謀な坊やだよ……そして、失礼ながらあんたは、妖精圏とそこでの振る舞い方について、あまりよくご存知でないように思える。と言っても、誰もがここに理由あって訪れるわけではないけれど、その人自身か、あるいはその人を見守る者のどちらかはそれを知っているもの……だったら、あんたはご自身の望むようにするのがよいだろうよ」

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