第7話 妖精国へ

衣装棚は黒いオーク材でできた、前面に引き出しが付けられた古風な家具だった。それらの棚にはいばらが主要な部分を成す、丹念な葉の彫刻が施されていた。そのもっとテーブルに近い部分はその通り彫刻そのままだったが、テーブルからより離れた端では、きわだった変化が起こっていた。僕はふと、小さないばらの葉のかたまりに目を留めた。それらの始めは明らかに彫刻家の手になる作だった、次のは少しおかしな風に見え、3番目はまぎれもなくいばらだった。そしてその真後ろに、クレマティスのひげが、引き出しのひとつについた金箔の取っ手のまわりに絡み合って巻きついていた。次にかすかな動きを頭上に聴いて僕は見上げ、ベッドのカーテンに意匠された枝と葉がわずかにそよぐのを見た。次にはどんな変化が続くのかもわからないまま、僕は起きるのは今だ、と思った。そしてベッドから飛び起きると、素足は涼しい緑の草を踏みしめていた。僕は大急ぎで着替えたが、いつの間にか僕は、自分が大樹の下で手洗いを済ませていることに気がついた。頂きにある枝々が、黄金の太陽の流れの中多くの交差する光を連れて、頂きの葉と枝の影が滑るように葉と枝の上を流れ、涼しい朝の風が引いてゆく海の波のようにそれをあちらまたこちらへとゆらし、波うっていた。

澄んだ流れで出来る限り手洗いした後に、僕は起き上がり自分の周りを見た。その下で僕が一晩横たわっていたように思える大木は密集した森のいわば尖兵のひとりで、小川はその森へと流れていた。かすかな足跡が、生い茂る草や苔はたまたルリハコベさえそこかしこに繁茂する中を、右手の土手に沿って続いていた。「これが」と僕は思った。「まちがいなく昨夜の淑女が"僕が間もなく見出すだろう"と約束した、妖精の国へとつづく道に違いない」僕は流れを横切り、流れに沿って、右手の土手にある足跡をたどり、思ったとおり、それが消える前に森へ入った。ここで僕は、はっきりした理由は何もないまま足跡を捨て、ぼんやりとした、僕はこの道をたどるべきだという感覚と共に、さらに南のほうへと向かった。

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