第6話 神秘の水流

二章


「水はどこにあるの?」彼は泣きながら叫ぶ。「我らの上にある水流が見えぬか?」彼は見上げた。すると、見よ! 蒼い流れが彼らの頭上を、ゆったりと流れていた。

ノヴァーリス「青い花」


これら奇妙な出来事が僕の脳裏を駆けめぐっていた時、突然、何時間もなげき叫ぶ海に、あるいは一晩中窓の外で唸りを上げる嵐の声に人がふっと気づく時のように、僕はすぐ近くを流れる水音に気づいた。ベッドの外を見て、僕は部屋の隅に低い台座の上に造られいつも僕がそこで顔を洗っている大理石の大きな水瓶から、泉のように水が溢れているのを見た。そして澄んだ水がカーペットの上を部屋のあらゆる方向に走り流れ、探しても水の出口は僕にはわからなかった。そしてもっと奇妙なことに、このカーペットは僕が自身で草とヒナギクの草原を模して意匠したものだが、その端は小さな川の流れと接しており、そこの草とヒナギクは小川の流れにしたがって吹くそよ風になびいているように見えた。一方、小川の下では目まぐるしく変わる流れのあらゆる動きに応じて曲がり、うねり、まるでそれら草とヒナギクは流れと溶け合い、モノとしてのかたちを捨てさり、水として、流れそのものとなるかのようだった。

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