第1話吸血メイド三つ星時雨2

 ううん、なんか結構寝た様な。微妙に変な感じがして目が覚めたんだけど、って思って目を開けてみると、何故か時雨さんがのしかかっていた。


「え、あの?」


「あら。お嬢さま、起きちゃったんですか。ちょっとジッとしててくれたらいいですよ」


 え? え? どう言う事なの。なんか段々近づいて来て、綺麗な顔が間近に。ドキドキしちゃうじゃない。


 ってそうじゃなくて! もしかしてわたし、イケない事されちゃったりするの。

 もしかして、時雨さんの目的ってこんな行為に及ぶ事? ああ、本当に女の人のロリコンっていたんだな。

 どんな事されるんだろ。どうせなら、お姉ちゃんにされたかったな。


「ど、どうしてこんな事するの・・・・・・?」


 ニコリと時雨さん。いい笑顔なのが逆に怖い。


「いえね、お嬢さまの寝顔があまりにもあどけなくて美しくて、もうたまらなくなってしまいまして。素顔のお嬢さまも素敵ですよね」


「いや、そうじゃなくて。こんな事してタダで済むと思ってるの。どいてよ」


 ふふふと時雨さんが笑うので、まだまだ強く返してもビクビクしてるわたし。


「お嬢さまの肌が綺麗なので、ちょっと血を吸わせて欲しいだけなんですよ。いえ、そりゃあお嬢さまには他にも色々したくなるくらい、今日一日だけで魅力は伝わってしまっているんですがね」


 は? 血って言った? それって一体。


「ふふ、私実は吸血鬼なんですよ。正体隠せって言われてましたけど、早速自分でバラしちゃいましたね。ささ、それでは早速頂いて・・・・・・」


「わーわー! 誰かいないの。助けて、お姉ちゃん」


 そう言ってもがいても全く誰にも聞こえるはずもなく。

 この時間だったら、お姉ちゃんはお風呂に入ってたか。あれ、でもこれってエッチな何かをされるんじゃないのか。それでも痛くされるのは嫌だなぁ。


 そう思って目を閉じて怖々その瞬間を待っていたら、かぷっと歯が当たる感触がして、最初はチクッとしてうっと思ったんだけど、これがどう言う仕組みなのか、何だかかゆみを感じるみたいに気持ち良くなって来ちゃうの。


 蚊に刺されてもそんな気持ちにならないと思うけど、それがもうマッサージされてる時みたいに、ううん、それ以上にゾクゾクしていく様な変な感じ。


 これって何なの!


「あっ。やっ。こんな・・・・・・のなんて駄目・・・・・・なんだからぁ」


 一通り吸ったのか、ペロッと舐めて、わたしからどいてくれる時雨さん。舐められた時も、何だかおかしな気持ちになっちゃいそうな気分。


「はー。凄く美味しいです。美少女の生き血ってこんなに生だと美味なんですね。ごちそうさまです、お嬢さま。さあ、献血してくれた後は、牛乳とパンでも召し上がりますか」


 そうやって支度をする時雨さん。いや、こんな女、時雨で充分! こんなロリコンに身を委ねてたら、どうなっちゃうかわかったもんじゃない。


 でも、エッチな事ってわたしよく知らないのよね。あの血を吸われた時の快感が、エッチな気分なのかしら。


 まだわたしがボーッとしながら憎しみを募らせていると、はいとコップに牛乳を注いでくれるので、フラフラと起き上がって、口にする。・・・・・・ああ、冷たいこの感じが今は最高。


 そうして、パンも夕食後だと言うのに平らげてしまっていると、お姉ちゃんが居間に帰って来る。遅い! もうちょっと早ければ、阻止出来たのに。


「あら、小春。何だか顔が赤いけど、大丈夫? しんどいなら無理せず、早く寝た方がいいわよ」


 わたしは今起こった事をお姉ちゃんに言おうとして、ハッとなってしまう。そうだ。こんな話されても、俄には信じられないよね。


 まさか、吸血鬼に襲われましたなんて。そうして、わたしがあははと苦笑している内に、お姉ちゃんは何も知らずにペットボトルを持って部屋に戻って行ってしまう。


 ああ、お姉ちゃん、どうしたらいいのよわたし。変な事されたから、わたし顔赤いのよ。


 お姉ちゃんはもう向こうでくつろいでいるだろうし、お母さんと氷雨さんはいつも仕事中。

 それじゃあ、わたし一人で対処するしかないのかな。それでわたしは、とりあえず眼鏡をかけ直して、意識をハッキリさせる。


「ちょっとここ座って」


 何だかきつい言い方になってしまうのは気がとがめるが、わたしが悪いんじゃないから。この女、どう言うつもりかしら。色々聞き出さなくっちゃ。


「吸血鬼って本当にいるのね。で、普通そんな魔物って日の光には弱いはずだけど、どうなってるの」


 ああ、と納得顔の時雨。ニコニコしてて、ヤバいとか危機感感じないんだろうか。


「それはですねー、結構幾つか話しておかないといけない事もありますので、先にお風呂に入られては如何ですか」


 ふうむ。なんか事情があるのね。って言い訳を聞くだけでも良かったんだ。それでも許すかはわからないけど。


「それとも、一緒に入って、お背中を流させて貰えるんですか。私、幾らでも綺麗にしますよ。何なら、頭も洗ってあげましょうか」


「結構よ! それじゃあ、後でちゃんと説明して貰うから。覚悟しとく事ね」


 そう言って、尚もご一緒させて頂けませんかー、とか言うのを振り切って脱衣所に向かう。裸なんてお姉ちゃんでも恥ずかしいのに、こんな下心バリバリの女に見せるもんですか。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る