第9話 神成魔獣!

「先へ行くぞ」

「え?男の人は逃げろと言ってましたが……逃げないんですか?」

「ここで何が起こっているのか確認する」

「なぜですか?もしかしたら、危険な目にあうかもしれないのに」


 確かに危険はあるかもしれない。

 でもここで戻ったら後々、後悔しそうな気がした。


「文句は言わない約束だろ。ほら行くぞ」

「まったくっ……元康さんは。それにあの男の人はどうするんですか?」

「帰りにでも拾ってやればいいだろう」


 アイテムもったいないし。


「…はぁ………」

「どうしたんだ?溜息なんか吐いて」

「……………………」

「なんで黙ってんだよ」

「ふんっ…………………」


 なんだコイツ。

 俺たちはダンジョンの道を進んでいく。


「なんか臭くないか?」

「そうですね!」


 なんで怒ってるんだ?

 別に怒られるような事してないんだけどな……

 ダンジョンの奥へと進むと臭いがさらに強くなった。


「死臭ですよこの臭い……それにこの酷い死臭はもうだいぶ腐敗が進んでるかもしれません」

「警戒した方が良さそうだな」


 ダンジョンの道に大量の血痕と所々

に屍のようなモノがあった。

 血痕はダンジョンにはいった時からあったが、ここのは比べようもない大量が血痕がある。


「そろそろ出ますよ」

「なんかいるぞ」

「分かるんですか?」

「あぁ、ヤバいオーラが伝ってくる、コイツはただのモンスターじゃないかもしれん」

「結局私、危険な目に遭うんですか」


 正直に言おう……。今回はマジでヤバいかもしれない。

 さっきからずっと恐ろしいほど殺気を感じるのだ──殺気だけで殺せてしまいそうなほどの殺気を。


「一応聞こう……覚悟は出来てるか?」

「ここまで来たら、嫌でもしなきゃいけないじゃないですか」

「それもそうだな──アシストスキル──【グラントハーフアビリティ】!!」

「なんか……変な感じがします」

「今お前は俺のアシストスキルで俺のステータスの50%が付与されてる」


 フレデリカはポカンとする。

 まぁ、当然だろう。フレデリカはステータスやスキルの存在など知らないのだから。

 ここで少し、俺のスキルについて説明しよう。

 【グラントハーフアビリティ】は俺のアシストスキルの一つだ。これを使うとさっきも言ったとおり俺のステータスの50%を付与できるスキルだ。

 ここで少し俺のステータスを思い出してみてくれ、俺のステータスは全ては『測定不可』。

 これが何を意味するかお分かりいただけただろうか?

 測定不可の50%は一体どんな数になるのか?

 もう分かっただろう……

 これは『もう一人の俺を作りだすことができる』ということだ。

 つまり今のフレデリカのステータスは俺と同じになっているはずだ。

 まさにチート級そのものだ。


「立ち尽くしてどうしたんですか、」

「すまんすまん──そんじゃ行くか」

「嫌ですけど、行きます!」


 俺たちはダンジョンの道を抜け、死臭の漂う開けた場所へと出た。

 

「なんだこれ……死体だらけじゃないか」

「死臭の原因はこれだったようですね」


 ……くぅっ……なんだこの凍るような殺気は……


「向かうから何か来ます……」

「あぁ……」


 ……!?俺たちは目前の光景に悪寒が走る。


「モンスターがモンスターを喰ってる……だと?」

「この世界において、モンスターがモンスターを喰らうなんて聞いたこともないですよ……この世界にいる全てモンスターは魔王の手下なんですよ?自分の仲間を喰らうんなんてあるはずが……」


 モンスターが喰らっていたモンスターを投げ飛ばし、俺たちの方へ向かってくる。

 一見するとバカでかいオオカミだ。


「我が権限でその者の能力を開示せよ!!」


 俺はそのバカでかいオオカミのステータスを確認する。


【神成魔獣 ハティ】


【体力 百億六千万】

【攻撃力 八十五億二千万】

【魔力 五十億】

【防御 二十億】

【特防 二十億】

【耐性】

 無

【スキル】

 体力減少制限

 時間経過回復

 敵体力制限


 お約束のチート級のステータスですね。はい。

 しかし、『体力減少制限』と『敵体力制限』ってなんだ?

 詳細を表示した。


【体力減少制限】

自分が受ける攻撃は体力の25%以上は減らない。

【敵体力制限】

自分を対象とする敵に対して体力を一兆以下にする。


 ………は?

 正直、一撃で倒せると思ってたんだが。

 俺たちが攻撃しても、あいつに軽減されるってことか。

 それに時間経過回復が厄介だ。最悪の場合、攻撃と回復のループになる。そうなった場合、体力の制限がある俺たちが一方的にこちらがダメージを食らうことになる。

 それだけは避けなければいけない。いくら戦い慣れた俺でもエンドレスはキツい。


「フレデリカ大剣を出して戦え、今のお前なら大丈夫だ」

「私のこと殺す気ですか?」

「俺のこと殺す気か?俺だけじゃ確実に死ぬ。断言しよう」

「そんなこと断言しないでください。分かりました私もあなたを信じて戦います」


「シンセイマジュウノワレガキサマラヲコロシテヤロウ」


「今、魔獣が喋りましたよ!?」

「そんなの見れば分かる、今は戦いに集中しろ!!」


 魔獣が風のごとく攻撃してくる。


「フレデリカ!後ろに回って攻撃しろ!」

「分かりました!」


 フレデリカが背後に回り、大剣を振り下ろす


「ニンゲンゴトキガワレニカナウワケガナイ」


 身体を大きく動かして大剣を身体から抜き、空中で大剣を咥えて、フレデリカを壁へ打ちつける。


「がハッ!!」

「フレデリカ!!くそ!!攻撃が全然効いてない。攻撃スキル──【滅殺斬り】!!」


 刀の刃が紅くなる。


「やあぁぁぁあ!!」


 牙で攻撃を防がれるが、牙諸共斬り顔にダメージを与え、さらにキラーダメージを上乗せする。


「ガアアアア!!!」


 キラーダメージがかなり効いている気がする……弱点さえ斬れればかなりダメージを食らうはずだ。1回の攻撃で25%以上削れないなら何回も攻撃するだけだ。


「まだいけるか?フレデリカ」

「ま、まぁ……なんとか」

「今からあいつの身体全体を攻撃するが、攻撃した後はお前が俺の代わりにあいつを攻撃しててくれ、しばらくしたらまた戻る」

「一体何する気ですか!?」

「頼む俺の指示に従ってくれ!攻撃スキル──【極限攻撃】!!!」


 一瞬にして地面が割れ、刀身に赤い電気のようなものを帯びる。そして、霞の構えをし、切っ先を魔獣へと向ける。


「来い!魔獣!!」


 魔獣が攻撃してきた時、さらに攻撃スキルを上乗せする。


「攻撃スキル──【カウンター】」


 そのまま攻撃してきた魔獣の真正面に刀を突き刺す。

 剣から光線が出てその光線が魔獣の身体を貫通し、地面ごとえぐる。


「グッ!──◼◼◼◼」

 

 空に無数の雷樹ができる──雷樹から巨大な電気を纏った玉ができる。


 「クラッテミヨワレノワザヲ」


 魔獣は巨大な電気玉を放つ。


「俺の後ろに来い!フレデリカ!!」

「わ、分かりました!」


 フレデリカが俺の背後に来た瞬間、目前で大爆発が起こる。


「わぁぁぁああ!!」

「きゃあああ!!」


 俺たちは爆風で飛ばされる。


「ッ……このままだと俺たちがやられる」

「イタッ…………」


 フレデリカの方へ目をやると鎧が割れ口から血を吐いている。

 

「クッ……これを飲んで少し休んでろ」


 俺はフレデリカに回復ポーションを投げる。

 この状況を何か打開する方法はないのか、アシストスキルを使うには前に使ったアシストスキルを解除しなければいけない。


「仕方ない……もう一度『極限攻撃』をするしか……」


条件── 『一定以上の体力が減る』クリア。


【コンテニューアタック】が解放されました。






 


 



 

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