第4話 ドラゴンキラー!

カロッツェなんちゃら王国へと向かう道中。

俺はフレデリカにある質問をする。


「フレデリカ、お前は何者なんだ?」


フレデリカは立ち止まりこちらに身体を勢いよく向けて言う。


「助けてもらってお礼も言わない人に教える事なんて無いです!」


「(…ッ…このロリさっき事をまだ…!!)」


「さ、さっきは悪かった!ちょっと自分より年下の…しかもロリの娘に助けてもらうってのはプライドがな!?」


「それでも助けてもらったら感謝するのが当然です!あなたが悪いと思っているなら今、ここで私に感謝の言葉を述べてください!」


「わ、分かった……その〜さっきはドラゴンから俺を助けてくれて──ありがとう──」


やっぱりちょっと恥ずかしくて目を逸らしてしまう。俺は年下に感謝することはあっても、

いままで感謝の言葉を述べた事がなかったのだ。厳密に言えばどう述べたらいいか分からなかっただけだが。


「まぁ、とりあえずお礼の言葉が聞けたのでいいです」


クソ!偉そうにしやがって!!


「さっきの事も謝ったしお礼も言ったぞ、だからさっきの俺の質問に応えろ」


「そういえば質問されていましたね…分かりました。では教えることのできる範囲で教えます」


「私は今向かっている王国、カロッツェリア王国を活動拠点として勇者をやっています。ですが、私はドラゴン『しか』倒す事が出来ないのです。ですから普段は遠くへ討伐しに行くんですがココ最近こちらでもドラゴンが出るようになり、王国周辺の見回りをしているのです」


『ん?今…変な事を言わなかったか?フレデリカは勇者でドラゴンしか倒せな──ドラゴンしか倒せない!?』

どういうことだ!?『勇者をやっている』

これはまだ分かるが、『ドラゴンしか倒せない』…え?ドラゴンしか倒せない?おかしくないか?普通、雑魚モンスターしか倒せないとかじゃないか?ドラゴンはRPGとかだと上級モンスターとかボスとかになっているモンスターだぞ?それがあいつの中では雑魚モンスターになっているのか?つくづく思う


「(チート級じゃねぇか!)」


「どうしてお前はドラゴン『しか』倒せないい理由はなんだ?」


するとフレデリカは背中からバカデカい大剣を取り出して見せる。

一体どうやってあんなバカデカい剣を鞘に入れているのか謎だか。どうせ魔法剣とか魔法の鞘とかいう魔法の類なんだろうな……


「この大剣こそが私にドラゴンを倒せるようになった理由です。私は決して最初からドラゴンを倒せていた訳じゃないんです…実はドラゴンどころかその辺のモンスターにもやられる始末だったのです。ですがこの大剣を手に入れて、ドラゴン『は』倒せるようになったのです」


なるほど…

ドラゴンを倒せる力でもくれる武器なのか?

おそらくだが、他人の武器のステータスも見る事も出来るはずだ。ステータスを見る事に意識を集中させる──

ビュインッッ──

やっぱりか、ステータスは──

【龍殺し・極】

【攻撃力up+5640】

【付与効果】

ドラゴン系のモンスターに対して攻撃力が

10億倍になる。さらに、攻撃が当たるごとに攻撃力+100%


あ、はいもうなんか知ってました……

しかし、この武器──

本当に名前通りの武器だな…こんなThe・モンスターキラーに勝てるドラゴンが果たしているだろうか。


「こんなチート級の武器、どこで手に入れたんだ?」


「この大剣はとあるダンジョンのモンスターからドロップした武器なのです」


*

これはまだ私があの大剣を手に入れる前のお話し。


「お母さん!!私、勇者様になりたい!!」


私は幼い頃から勇者になることを夢見ていた。

そのキッカケは幼い頃によく読んでもらっていた本。本の名前は『勇者の大冒険』

ストーリーは至って普通で、勇者が魔王を倒すために冒険に出るといったものだ。

私はこの本に出てくる勇者が大好きなのだ。

『わぁ〜凄いなぁ…勇者って…』

勇者が強そうなモンスターに立ち向かう姿、

ピンチを切り抜ける姿、そして皆から信頼される勇者をかっこよく思い…憧れていた。


「勇者様になることをお母さんに許してもらうにはどうしたらいいだろう……」


私は今まで何度もお母さんに勇者様になりたいと言ってきた。けど、お母さんからの許しは出なかった。


「フレデリカはまだ子供なんだからそんなに急がなくてもいいんじゃない?きっと天国に居るお父さんもそう言ってるわよ?」


私が勇者様になりたいと言うといつもこのセリフを言う……

私は父と言う言葉に弱い──

私のお父さんはもうこの世に居ない…天国へと行ってしまったのだ。

私は幼くして父を失い記憶も曖昧だけど

一緒にいてとても楽しかった事は覚えている。


お母さんは私がお父さんに弱いことを知ってて言っているんだろう。

『ずるいよ…』

直接声には出さず、心の声で言った。


ある日、ついに痺れが切れて家を飛び出だしてしまった。


「私は別にお母さんの許しが無くたって大丈夫だもん!」


「ま、待ちなさい!フレデリカ!あなたにはまだ…」


『もうお母さんの言うことは聞けない!』


絶対、勇者様になってみせる!

こんな私でも勇者様になれる事を証明するんだ!


勇者様になるためにはまず、装備と武器が必要だ。


「どうしよう…装備と武器の買えるお金が無い」


私はあんな事を言って飛び出した家に帰る訳にもいかず、道をウロウロしていた。

そんな時、冒険者らしき人たちの会話が聞こえた。


「おい聞いたか?ココ最近東に新しいダンジョンが見つかったらしいんだが…装備や武器がドロップするらしいぜ」


「あぁ、俺も聞いたぜ、だがよそんなダンジョンがあんのか?」


装備や武器がドロップするダンジョン…そこへ行けばきっと、装備と武器が手に入るかもしれない。

私はそのダンジョンがあるという東へ向けて出発した。


「東の方にだいぶ来たけどまだダンジョンが見つからないな」


諦めかけていたその時──

突然、地面に穴が空いて穴の中に落ちてしまう…


「きゃあぁぁ!!」


ドシンッ──

下の砂がクッションになり、大きな怪我はなくて済んだ。


「いたた………………ここどこ?──」


今の私の顔はとんでもないマヌケ顔をしてるだろう。

私は上を見上げ、自分の落ちてきた穴を見る。


「あんな高いところから落ちたの?これからどうやって戻ろうかな…」


上には登れそうになく、地上に戻る方法を考えていると奥へと続く道を見つけた。


「(あの道から外に出られるんじゃ?)」


私はその道を歩き奥へと進んだ。

しばらく歩いていると、広場へと出た。

その真ん中に──


「宝箱?」


宝箱へと近づき、宝箱を開ける。


「これは……武器?」


宝箱の中には小さな剣が入っていた。だけど戦闘向きではなさそうだ。

『まぁとりあえず武器は手に入ったしいいか』

ザン…ザン──と音が聞こえる──

向こうからやって来る…あれは──


「リザードマン!?」


1匹のリザードマンがこっちに向かってくる。

リザードマンは一度だけ冒険者が戦っているのを見たことがある。

リザードマンの弱点…うなじだ…背後に回ってうなじさえ攻撃出来れば私にだって倒せるはず──

小さな剣を構え、急いで背後へと回る。


「やあぁぁ!!」


上手くうなじを攻撃することができ、

リザードマンが倒れドロップ品が出る。

ドロップ品は…


『鞘と大きな剣?』

私はそれを手に入れてからドラゴン『は』倒せるようになったのだ。

いつドラゴン『は』倒せる事に気づいたのか…

それは私にも分からない…ただドラゴンの時だけ無性に勝てる自信が出てくるのだ。

実のところリザードマンは倒れただけでたまたま近くに居た冒険者に助けて貰ったのだが、

見栄を張るためリザードマンは自分で倒したという事にしている。それからドラゴン討伐の依頼だけを受け、必ず成功して帰ってくることから、ギルドや冒険者の間では『ドラゴンキラー』と呼ばれていた。

*

「この大剣は私が初めて倒したモンスターからドロップした──思い出のある武器なんです」


私はまたちょっとした見栄を張ってしまったのだった。

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