第24話 果てに咲く終わらない夢を
マーディ達一行は工場での激闘を終えた後、アトミラへと帰還した。聖女カルアに任務の成功を報告するのは明日にお願いしますとユカ・ローニスから申し出を受け、帰った日はパーティメンバーはそれぞれぐっすりと休んだ。そして次の日、アティア達のパーティは町の外れにある建物に闘技場地下について相談があるという事で呼び出された。次にマーディ達のパーティはアトミラ円形闘技場に呼ばれ、4人は闘技場にあるアーチ状になっている入り口を潜り抜けたところだった。
雲一つない青。汚れのない純粋な空に、黄色い花びらがアトミラ円形闘技場を舞っていた。
「これは、どういう事になっている?」
マーディは闘技場にある砂地の試合場が、黄色い花びらで全て覆いつくされていることに驚きを隠せなかった。闘技場の客席では、教会のガーディアン達が黄色の花びらを風に乗せ、辺り一帯を黄色の世界に変えていた。
その試合場の中心にユカ・ローニスは一人、上を向き、瞳を閉じて膝まづいていた。その行いは、まるで神に許しを乞うているようにマーディは見えた。
そして、4人が試合場に入って来るのに気づくと、ユカ・ローニスは立ち上がって言った。
「聖女封印!」
ユカ・ローニスが叫ぶと、つい先ほどまで花びらを空に浮かべていたガーディアン達が一斉に倣うように聖女封印を言葉にし、魔法を唱えた。
「なっ!何をするっ!?」
ディミル・シューバートが光る円柱の中に閉じ込められる。
「ユカさん!いったい何を!」
マーディの問い掛けに、ユカ・ローニスは淡々と返す。
「彼女は聖女に立候補している立場です。
「今から聖女の試練を?」
「そんなバカな事があるか!」
マーディの言葉に、ディミルが否定する。
「何のマネだ!ユカ・ローニス!それにこの花びらの演出は、聖女に選ばれた後の式典か、聖女が亡くなった時に行われるものだ。これは聖女カルアの命令なのか」
ディミルの言った言葉に、ユカは僅かに笑う。そして、淡々と話しながらも、感情が節々に漏れる。その抑揚は高ぶりからか、それとも達観か。マーディには判別できなかった。
「あなたたちにはここで死んでもらいます。聖女カルアを殺した犯人として、我ら
「犯人に仕立てる!?お前・・まさか、聖女を・・カルア様を殺したのか!」
ディミルの言った内容に、ユカは叫んで否定する。
「あんな奴は聖女ではない!ディミル、黒のガーディアンよ。お前の仇でもあったのだ。奴は・・、カルアは竜名残惨殺事件の首謀者なのだ。家族の仇を・・やっと討てたのだ!喜ぶべきことだ」
ユカの言った言葉にディミルは驚くが、それでも反論を繰り出す。
「もしそれが本当なら、正式な手続きで裁くべきだった。自分たちも獣に成り下がってどうするのだ・・。それでもテラの信徒だと言えるのか・・」
ユカは力強い意志を持った目で言う。
「御託はいい・・。さあ、神技使い殿。そしてそのパーティの皆々様!我ら黄のガーディアンはこれから教会の腐った者達を粛正していく!その教会の正義のために、あなた達には贄になっていただきたい!正し!拒否権は無効!潔く、首を差し出してください、マーディさん」
マーディはパーティメンバーの二人の顔を見る。リーゴ・トミナは青ざめた顔をしながらも、その手には鎖鞭を握っている。そして、ロミの顔は引きつっているが、両手にナイフを持ち、その瞳には戦う意思が感じられた。
マーディは霧の剣を抜きながら、ボヤくように言った。
「戦うしかないのか。正直、戸惑い過ぎて頭の処理が追い付いていない!」
「俺もだクソが!」
「右に同じく!」
マーディ、リーゴ、ロミの三人は臨戦態勢をとる。その横で、ディミルはひたすらに祈りながら見守り続けるしかなかった。
「果てに咲く終わらない夢を」
ユカ・ローニスはマカイを唱えた。そして、言葉を紡ぐ。
「テラの名のもとに・・。神技使い、そのテラの神の力。私たちの正義のために、終焉へと誘おう!」
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