第10話 テラ教会の僥倖
「これはまさしく僥倖である!」
恰幅のいい体で、マルティオ・ドルトニー司祭は叫んだ。
アカデミーにある丸いレリーフが特徴的なテラ教会支部の建物の2階で、マーディを含むパーティを組むことが決まってる4人が集まった。その教会2階の部屋でマルティオ司祭に任務の説明を受けるためだ。
「いや失礼、つい興奮してしまった」
マーディが神技使いだとわかるとつい叫んでしまったことを、マルティオ司祭は謝り、コホンと咳払いをして説明を始めた。
「戦士の町アトミラと呼ばれる町がありまして。そこにもう使われていない古い闘技場があるのです。その闘技場はテラ教会の所有している場所でして。つい先日、信徒の一人がある地下室を発見したのです」
「アトミラね・・。しかし初耳だわ。普通なら教会内で一つのニュースとして広まっているはず」
ディミル・シューバートの疑問に、マルティオ司祭は同意するように頷く。
「ええ、その通りです。私も任務の詳細を聞いて初めて知ったのですが。教会内でも情報を一部の者以外に伏せていたのはその地下室であるものが確認されたためだと思われます」
「で、何が見つかったの」
「はい。虹の光が描かれた扉があったのです。そして、魔法アカデミー前学長の痕跡がありました」
「虹の光・・神技。それで神技使いに依頼を。いや、任務を割り当てたのはアカデミー側かも。それと、情報を伏せていたのは前学長ギデーテの件があるから・・でいいのかしら」
「私もそう予想しております」
司祭とディミルとの会話に、パーティメンバーとして集められた中の一人、リーゴ・トミナが不機嫌な表情で割って入った。
「で、何で俺とロミが転生者様のパーティに呼ばれたんだ」
「ちょっとリーゴ!失礼だよ」
もう一人のメンバーであるロミ・クライセスが慌てて注意した。
「それは私からは何とも。こちら教会側としては依頼と協力を申し出たまで。同行者として教会のガーディアンであるディミル様も同行を打診は致しましたが」
司祭の返答にそうかよっとぶっきら棒に返事をすると、リーゴ・トミナは黙った。
「でも私は嬉しいな。ディミルちゃんとパーティを組める日が来るなんて。いつもむさ苦しい人たちとパーティ組んでたからすんごく嬉しい!」
ロミ・クライセスはパーティの中で一番低い身長だが、弾んでジャンプしそうな、すぐに出発する勢いの声で言った。
「私は外に行けるなら何でもいいわ。ずっとアカデミー内で書類仕事だったから体がなまってるのよ」
ディミルの言葉に、両手を揉む仕草をしてマルティオ司祭は言った。
「それならこの任務はうってつけでございますよディミル様。地下室調査とは別に、
「竜名残とはなんだ?」
ずっと黙っていたまま、任務の内容を聞いていたマーディが口を開いた。
「神技使い様!竜名残とは動物や人間が滅びた竜の力に何らかの理由で汚染されて化け物になってしまったモノたちの総称でございます」
「何か聞いてるとヤバそうだな」
「いえいえ、神技使い様の前では月とスッポンでございますよ」
そ・・そうかとマルティオ司祭の反応にマーディは困ったように返した。
「とにかく、私たちのすることは2つ。今現在使われていない闘技場地下の調査。そして、竜名残の討伐。以上でいいわね?」
仕切り治すように、ディミルは話した。
「はい、その通りでございます。竜名残の化け物はアトミラの町から少し離れた場所で発見されました。今はまだ被害の報告はありませんが、いつアトミラが襲われてもおかしくありません。よろしくお願いしますね」
マルティオ司祭の説明を聞き終わると、4人のパーティメンバーはバラバラな思いでその場を解散した。
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