第9話 パーティ結成への道
魔法アカデミーの地下での審議から一日がたった。
生徒会長から客室の一室を与えられ、マーディは疲れからベッドの上に飛び込むと次の日の朝が来ていた。目が覚めてベッドから起きると、テーブルに朝食が置かれていたので窓を開けて新鮮な空気の中で食事を楽しんだ。
扉が叩く音が聞こえマーディはどうぞと言うと、全身鎧姿の生徒会長が入ってきた。
「マーディ、おはよう」
「おはよう、生徒会長」
「少し歩こうか」
生徒会長の申し出を受けると、客室のある校舎から外に出て校庭にある向日葵の花壇が見えるアンティークなベンチに二人で座った。
向日葵に囲まれた場所で、照らし始めた陽光が本格的な日差しを射そうとし始めており、丁度ポカポカした温度でマーディは気持ちがよかった。生徒会長は鎧を通して何か感じるのかふと疑問に思い、聞いてみることにした。
「生徒会長は鎧だから、今の日差しが気持ちいいとかはどう感じているんだ?」
「急な質問だな。もちろん、温度とかはわからない。しかし、鎧から送られてくる視界から想像を働かすことはできる。それとは別に、戦いにおいての魔力衝突で操っている側にも衝撃が来るときはあるが」
「衝撃が、なるほどね。そういえば、昨日の地下での話し合いの時、一瞬外に出た時があったと思うんだが。あれは何だったんだ」
マーディの言葉に生徒会長は肩を竦めながら説明した。
「あれか、細かいな君は。学長が転送魔法に使っている砂が苦手なだけだよ。一粒一粒に魔力が込められていて鎧にかかると操る制度が落ちるんだ。お前の様に無敵な力は持っていないのだよ」
「無敵か。まあ、そうなのかな」
「少し口が滑ったか。嫌味で言ったわけではない。だが、その力を持っている限り、免れない話題だとは思うぞ。慣れることだな」
「慣れる・・。よくわからないよ」
「そうか」
マーディと生徒会長の会話が途切れ、少しの間沈黙が訪れた。その間が気まずいのか、それとも別の何かなのか、マーディにはよくわからなかった。
「生徒会長、少しよろしいでしょうか」
いつの間にか目の前にやってきたアカデミーの学生服を着た男女二人が生徒会長に話しかけてきた。その後ろ、少し離れたところにはそれを見守る複数の生徒たちがいた。
「どうした。何か困りごとかね」
「いえ、隣におられる方はもしかして、今噂にある神技使いの御仁でしょうか?」
生徒の言葉に生徒会長は一瞬間を置いた後、言葉を音にした。
「どこでそれを聞いた?」
「先輩のカーリス様からです。それで、神技使いの方ですか」
「カーリス、あのお喋りめ。まあ、今更か。そうだ、彼が神技使いだ」
生徒会長の言葉に、聞いてきた二人の生徒と一緒に、後ろにいた者たちも歓声を上げる。すげーと口を開けるものや初めて見たと驚嘆顔になるものや、嫉妬の目で見る者も中にはいた。
「少し場所を変えよう」
生徒会長は言うと、ついて来いとマーディに言い、場所を移動した。
校舎とは独立した丸い円のレリーフのある建物に2人は入ると、黒いローブを着た女が羽ペンで書き物をしていて、その途中で入ってくる二人に気づくと顔を上げた。そして、生徒会長を確認すると面倒な表情に変わるのを確認したマーディは少し可笑しい気分になったが、それを表情に出すのは失礼なことを、転生して間もない自分でも理解していることだったので出さないことにした。
「ディミル、久しぶりに顔を見に来た」
生徒会長の言葉に、ディミル・シューバートははいはいと答えると、即座に反論した。
「あなたが来るときはだいたい何かあるのよ。その隣の人、もしかして噂の神技使いじゃないの?」
「ご名答」
生徒会長は拍手するが、もちろんそのパフォーマンスを素直に受け取るディミルではなかった。
「で、何なのよ。今上司に出す定期連絡の報告書書いてるから忙しいんだけど」
ディミルの面倒そうな態度にもめげず、もったいぶるようにクククと笑い言った。
「その上司からの任務がアカデミーに来たのだ。一時的だが、この神技使いと君とでパーティを組んでもらうぞ」
生徒会長の話の内容にディミルはじろりとマーディを見たが、マーディ自身も話の内容に驚くと生徒会長に言葉をぶつけた。
「俺も初耳だぞ。任務とはなんだ」
「お前は一応客人扱いだが、飯の種は稼いでもらわんとな。それにマーディ。お前には追い追いアカデミーに入学してもらうのも考えている。それに向けての一つの試験とでも思ってくれたまえ」
「他人の試験に私を巻き込むな」
ディミルは嫌そうな表情を隠さずに言った。
「君の所属しているテラ教会から直々に任務が来たのだ。神の領域と呼ばれる神技使いだぞ。テラに仕える者であれば、興味は沸くだろう?」
「それはそうだが。しかし、彼が本物の神技使いならな」
ディミルの疑いの目にマーディは慣れた口調で言った。
「生徒会長、自分の力や称賛には今だ慣れないが、疑いの反応には慣れてきたよ」
マーディの言葉に生徒会長も両手を少し上げて反応するしかなかった。
「何にしたって、慣れるのはいい事だ。そう言うしかないだろう」
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