第16話

「まずは古着屋の方に、もう一度、向かおうか。」


「うん、ステキなのが有ったら、ベミラサイが、カスティアクニになるかもだしね!」





 すべようながれる電波でんぱ


 その意味は、やっぱり分からないが、今は笑ってとなりられる。





 これから、この調子でダダれの電波でんぱにまみれて過ごす事になれば、色々と問題も起こるだろう。


 でも、追々おいおい、慣れて行くさ。


 死別という悲しい過去と戦っている彼女を支えると決めたんだから!





 幾何いくばくか歩いたところで、ミクルちゃんの手が離れた。


 どうしたんだろう? また何か見つけたんだろうか?





「どうした、ミクル?」


 オレの問いかけに、ミクルちゃんは、神妙しんみょうな顔をし……、





「いま、お兄ちゃんの存在力そんざいりょくが他に移ったわ。もう、アナタはタダのうつわに戻った。だから、これ以上アナタと話す事は無いわ。」



 まさかの変化球へんかきゅうで返して来た⁉





「ハァッ⁉」



 困惑こんわくするオレを尻目しりめに……、


「さぁ、早く次のお兄ちゃんの存在力そんざいりょく宿やどったうつわを探さなきゃ。じゃないと、一億年と二千万年前に、遥かアンドロメダの彼方で、私をかばって目の前で命を散らせたランティス=スターロ=メディライ=アクネバルタの…その行為こうい無為むいになってしまう。そんな事になったら、ガイト=キンバネス=クエルト=サリバンも悲しむわ! だから私は世界を救うの!」


 トルネード投法とうほうさお鋭利えいり変化球へんかきゅうケーマークを重ねるッ⁉





 ちょっと待て!





 目の前で亡くなったのが一億と二千万年前とかアンドロメダの彼方って……ッ⁉


 それって……『その話そのものがすで電波でんぱだった。』って事かッ⁉





「じゃあ、さようなら、一つ前のお兄ちゃんのうつわさん。タダの一般人に戻ったアナタと、また会う事は、もう無いと思うけどね。」



 そのままスタスタと離れて行く。



 もうオレには何の興味も無いと言わんばかりに、一度いちどかえことく、その姿は遠くなって行った。


 あとには、ポツンとのこされたオレだけが、寒空さむぞら景色けしきのこされていた。





 しばし、その場で放心ほうしんしていたが、徐々じょじょに笑いが込み上げて来る。





 オレは、ずっと彼女を制御せいぎょしていたつもりだったが、はじめから彼女はオレの手の外にたんだ。


 というか、そもそもの前提ぜんていからして間違まちがっていたんだ。





「ハハ…ファンタジーは所詮しょせん、夢だからファンタジーなワケで…。現実として続いたら、それはノンフィクションっていう、日常的で、いつでも見れるツマラナイ物になるってこった! ま、極上ごくじょうのファンタジーが突然とつぜんってきて、突然とつぜんえただけだな‼ なんともファンタジーらしい終わり方じゃねぇかッ‼」


 寒空さむぞらなかで、オレのむなしいさけびが木霊こだまする。





 あ~しっかし、これで失恋回数一〇八回かよ……ッ⁉ 煩悩ぼんのうかずかってんだッ⁉





 それとも何か?


 この一〇八回で、すべてのやくちたってことなのか⁉





 ハッ‼ 最後さいごやくはデカぎだったな、オイッッ‼

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ファンタジーは突然に 軽量版 皆木 亮 @minakiryou

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