第3章

第11話

 つつがなく補給活動は済み、オレ達は次の目的地に向かって進む。


 狙いはショッピングモール。





 映画は当たり外れがあるし、カラオケは二人でまわすと会話の時間が潰れる。


 ゲームセンターは色々な遊びを提供してくれるので美味おいしいのだが、この時間にミクルちゃんのような年齢のを連れまわしていれば補導ほどうなどが怖いので今回はパス。





 ショッピングモールでのウィンドウショッピングなら、モノの好き嫌いがあっても、色々な店をまわっているうちに、好みのモノが見つかり会話が弾む事も多いはずだ。


 人の流れの多い箇所ではあるが、ゲームセンターをまわるよりは補導員の目も強くない。


 それに何より絶対に何かを買わないといけないワケでもく、見てまわるだけで楽しめるのだから財布に優しい。





 本来なら、そっちをまわってからめし、というパターンの方が良かったが、彼女と出会った時間と、オレの燃料ねんりょうタンクの都合で、順番がズレてしまった。


 しかし、お互いに胃がもたれたふうく、臨戦りんせん態勢たいせいはバッチリだ。





「ミクルは何を見たい? オレは新しいコートとか見てまわってみたいんだが?」


「うーん…小物とか見て行きたいかな。携帯のストラップとか、カワイイのがったらいなって。」


「そんなのでいなら買ってやるぞ? 今日は、まだ財布に余裕がるし。」


「ううん、さっきの店であんなに出してもらったんだからいよ。」





 そこでミクルちゃんの額にデコピンを一発いっぱつ見舞みまってやる。


 奇襲気味きしゅうぎみ一撃いちげきだったため回避かいひ運動うんどうままならず見事みごと直撃ちょくげきする。





いたッ⁉ いたいよ、お兄ちゃんッ⁉」


「オマエさぁ…。オレはオマエの何だ? 言ってみろ。」


「お兄ちゃんは…ミクルのお兄ちゃんだよ?」


「なら、兄貴あにきに甘えてみろ。いかミクル? 兄というモノは妹を可愛かわいがるモンなんだ。甘えてもらうと兄として嬉しいのさ。逆に甘えてもらえないと兄として自信が無くなるんだ。だから、遠慮せずにオレに買わせろ。むしろ、オレを喜ばすために、買いたいモノをガンガン言ってくれ。」


 デコピンを直撃させた箇所をでてやりながらゆるやかに言葉をつないで行く。





 ミクルちゃんは目を大きく見開いてからコクコクとうなずき…、


「じゃ、じゃあ、そこの小物屋さんにあるイルカさんのストラップが欲しいよ。」


 オレの申請にオーケーサインを出した。


「ホイ来た、じゃあ手始めにまず一つだな。」





 言われた店に入り、イルカのストラップを二つ頼む。


 会計を済ませてから、ミクルちゃんの携帯に付けてやってから、自分のにも装着そうちゃくさせる。





「えへへ、コレでミクル達、おそろいだね。」


「ああ、コレできょうだいじゃなくて恋人に見られるかもな?」


「うわ⁉ うわわわッ⁉」



 顔を真っ赤まっかにして、アタフタと良く分からないジェスチャーをプシューと蒸気じょうきの上がる勢いでしてから、その場に凍り付く。


 何とも初々ういういしい反応で思わず噴出ふきだしそうになる。





「ホラ、次に行くぞ。今度は何がいんだ? バンバン言ってくれよ?」


 作らずともみを浮かべながら次の攻撃こうげき目標もくひょう地点ちてんを聞いてやる。



「えと、えと、じゃあ、あっちの店を見てみたいよ。」


 安上がりだと思ってウィンドウショッピングにしたワケだったが、このと、こんなこころおどるデートという、オレには出来過できすぎなファンタジーを送れるのなら、このさいだ、出費は気にしないで行こう。



「ほいさ、了解ですよ、お嬢様。」

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