第2話 急げ急げ
オレの通う高校はここからバスで約10分。普段ならバスで通うところだが、今日という今日はこの寒さの中、着込んで自転車を走らせなきゃいけない。考えただけでしんどい。父さんはというと…まぁ、大変そうだ。
オレはブレザーとネクタイを急いで装備し、ロングコートと手袋を身につけた。父は洗面所でガタガタと音を立てながら支度している。妹は小籠包を美味しそうに頬張ってい…あいつはなんであんなに余裕でいられるんだ!?そして元凶の母は、慌てているオレ達を見ながら「大変そうねぇ」とつぶやいた。どのツラ下げてそんなこと言ってんだ?
とにかくオレと父は、急いで玄関で靴を履き、妹はランドセルを背負ってノコノコと後に続いてやってきた。靴を一番乗りに履き終えたオレは、玄関のドアを勢いよく開けた。
さぁ、自転車に乗ろう…あれ?
まぁ、オレも父も、マイペースな妹でさえも、そしてオレ達を見送ろうとした母も。
みんな驚いたよ。だってさ、オレ達の家は住宅街にあるんだから、普段ならドアを開けたらアスファルトの路地が現れるはずなんだよ。普段ならね?
なんで石畳みの路地が広がっているの?
なんで街ゆく人々の中に、人間とは思えない見た目の「何か」がいるの?
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