異世界ファミリー

ヒナタジャンクション

第1話 遅刻

「もうホント何考えてんの!?」

「今日は朝早くから会議なんだぞ!?」

「私は別に遅れてもいいやー」

「ニャー」

「えー?だって、今日はこういう気分だったんだもん。作ってたら時間かかっちゃって…」

朝8時。食卓に並べられたのは、それはそれは豪華なメニューだった。テーブルの真ん中には、にわとりを丸ごと焼いたと思われる北京ダックの代わりがドンと置かれている。その「偽ダック」を中心に、麻婆豆腐、回鍋肉、青椒肉絲…母いわく、昔の中国をイメージしたとかなんとか…じゃなくて!

「気分ってなんだよ気分って!晩ご飯でもスケールがデカいよこれは!」

「スケールがデカい?嬉しいわー」

パジャマ姿でツッコミを入れる俺と、同じく部屋着で呆然とする父、朝ドラを観始めた妹、褒め言葉と受け取る母…中華料理と同じくらい油っこい状況だ。

「とりあえず着替えるわ。自転車で急いだら間に合うかな…」

「とりあえず会社に電話…妻が宮廷料理…」

「えー?食べないのー?せめて小籠包だけでも…」

「私小籠包食べたーい!」

朝っぱらから焦りと怒りを感じながら、オレと父はそれぞれ動き始めた。

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