その頃冒険者たちは①(外伝4)
注意!アルファノアがリトビエ王国を取った後の話になっています。
冒険者の依頼のなかには調査・採取・討伐・護衛などといった種類がある。
どれも安全で簡単な依頼というものはない。
調査は、遺跡や未開の地など人が入ったことがない場所への依頼が多く
危険度が一番高い。
討伐は、主に魔獣の討伐が中心だ。
小型から大型のものまで、単体もしくは集団戦が多い。
護衛は、商人から貴族、人もしくは物が対象となる。
護衛中の対象への損害は冒険者ギルドが持つため粗雑や乱暴な者は受けられない。
また、単独で受けるのは禁止で3人以上とされている。
採取は、安全に見えて一番簡単そうに思えるかもしれない。
だが、採取こそ最も難しい依頼である。
もちろん、子供でも受けられそうな簡単な依頼もある。
こんな感じだ。
※依頼例
【等級:鉄以上】
【採取:アリエロ草】
【数量:30以上】
【報酬:元リトビエ王国銅貨50もしくは30ノア】
【備考:指定の数量以上は追加報酬あり】
アリエロ草という薬草を30個摘んでくれば元王国銅貨50か
30ノア(アルファノア国流通通貨)もらえ、30個以上摘んでくれば
報酬が更にもらえるというおいしそうな依頼である。
難しさもわからない新人の冒険者がこの依頼を掴み受付で却下される姿は
よく見る光景だ。
アリエロ草は薬草として扱われている草だが、生息地は森の奥だ。
森の奥は魔獣が多く、それらを躱しながら綺麗な状態のアリエロ草を
30摘むのは難しい。
採取物を見分ける目と知識、どんなところに生えているかわからないため
それに対応するための実力が不可欠なのだ。
採取は薬草に限らない。鉱物や水晶、魔獣の卵や毛、足、血など
ありとあらゆる素材が対象なのだ。
そのため、採取専門の冒険者というのが存在している。
さて、冒険者になった3人、リザ、ジータ、ソフィーは銅級へと昇級していた。
一年も満たない間にここまで上がっているのは驚異のスピードである。
彼女らの昇級速度はちゃんとした理由がある。
討伐依頼しかしていないのである。
もちろん、これに関しては何も問題はない。ただ、受ける頻度が短いのである。
普通の冒険者なら依頼達成後は体を休め装備を整えてから次にいくのだが
彼女たちは違った。一日に何件もの依頼を受けて達成する。
それを毎日繰り返していた。おかげでギルドにあった彼女たちが受けられる
討伐依頼はあっという間になくなってしまった。
リザはいつものように依頼掲示板を見る。
あるのは常に貼ってある依頼二つのみ。どちらも等級は金以上だ。
たくさん貼られている護衛や調査を見向きもせず、リザは二人の元に向かった。
「今日もなにもないわ」
リザの言葉にジータとソフィーは落胆の表情を見せた。
ここ数日彼女たちは依頼を受けられていない。
このままでは金欠になっていまう。
金が尽きれば、今いる宿から追い出されてしまうだろう。
せっかく、数ある宿の中でも一番の当たりを逃したくはなかった。
綺麗なベッド、湯浴みもでき、料理も美味しい。
昼食は携帯式にしてくれる。素晴らしい宿である。
「どうする?」
答えは返ってこない。
とある事情で国をまたぐような護衛は受けられない。
採取には知識がない。調査は論外だ。
3人が悩んでいるところにギルドの受付嬢が来た。
「あのー」
「なに?」
「3人に指名依頼が入っているのですが」
3人は顔を見合わせる。
時折、冒険者に指名が入ることがある。
最近目立った活動をしていたりと色々ある。
頻繁に使われないのは指名料金がかかるからだ。
ギルドを介している分、引かれるがそれでも決して安くはない金額が
冒険者たちに入る。もちろん、依頼料とは別だ。
「どんな依頼なの?」
「ええと、護衛依頼です。ドラムピ国までの」
受付嬢の言葉にがっかりする。自分たちはこの場所から動けない。
リザは依頼を断ろうとするがジータが慌ててそれを止めた。
「ねえ、一度聞いてみたら?」
誰に何をとは言わない。それでも、リザには十分伝わった。
「考えさせてください」
リザはそう受付嬢に答えた。
「わかりました。ですが返事は早めにお願いします。先方を待たせてしまうので」
そう言って去って行く受付嬢。
周りに人がいないことを確認してからリザはジータに話しかけた。
「聞くってどうやって?」
「いつも報告してる方法があるでしょ。それを使うのよ」
「でも、命令では・・・」
「ここの情報はほとんど報告したでしょう?国を取っているのだから
これ以上はいらないはずよ。むしろ、他の国の情報が必要なはず。そう思わない?」
ジータの言葉に説得力はあった。
ソフィーもうなずいていた。リザはいつも報告しているメッセージを使い
謁見を申し込んだ。理由は任務の確認と変更とした。
いつもと違った遅さで受領と返信のメッセージが届く。
それを残りの二人に共有した。
その夜、謁見の間にいた3人はいつも以上に緊張していた。
王に直接会うこと以上に、意見を述べること自体が初めてだからだ。
玉座にジンが座る。傍らにはレオンが立っていた。
3人は慌てて跪き頭を垂れた。
ジンが頷くとレオンが声高らかに顔をあげるよう命じ、話しかける。
「任務の変更と聞いたが?」
「はいっ!陛下はこの国を占領したとのこと。
我らの任務はリトビエ王国の調査ですがそれはもう意味を成さないかと思いまして
新たな任務を伺いに来たのです」
「ふむ」
「行動範囲を広げる許可をいただきたいのです」
「具体的には?」
「ドラムピ国までです」
ジンは少し考え込むような動作をしたがすぐに返事をだした。
「いいだろう」
その言葉に3人の表情は一気に明るくなった。
喜びでいっぱいという顔だ。
王の御前でなければ喜びで飛び上がっていただろう。
しかし、この歓喜は次の言葉で一気に落とされることとなる。
「次はドラムピ国を拠点として任務を続けるように」
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