37(対ドラムピ国戦1)

アルファノア国軍3万5千人とドラムピ国軍2万5千人は、ドラムピ国に

一番近い都市ヌンザワ近くの平野でぶつかった。

ぶつかったといっても、ドラムピ国軍は国境側で陣取りアルファノア国軍が

ヌンザワを防衛するような陣を張ることで両軍にらみ合う形になっただけだった。

ドラムピ国軍の大将は、ドラムピ国王ダロンだったが軍を指揮するのは

ガイマンド・オールダムが務めていた。

アルファノア国軍を率いるのは、シエラと副官にイレイン、ロレインの二人だ。

それと重要な部隊に何人かが配置されていた。


ドラムピ国軍本陣では王を含む主要なメンバーが顔を見合わせて

作戦を練っていた。

ガイマンドは参加していたものの意見は言わず、斥候からの報告を受けていた。

まずは、アルファノア国軍の様子をと思ったのだ。

報告が終わり斥候が去って行くと、ガイマンドは困惑した顔を一同に見せた。


「どうしたのだ?」


ダロンは気になってガイマンドに話しかける。他の皆も会話を中断した。


「先ほど斥候から報告を受けたのですが・・・にエルフがいたとのことです」


「馬鹿な!」


「さらにエルフの他に獣人も多数見えたとか」


「エルフが人と関わったことなどここ数十年ではないぞ!

何かの間違いではないのか?」


「間違いなくエルフだそうです。斥候の話では、もう少し近づこうと思ったらしい

のですがこちらを察知したような動きを見せたためやむなく撤退したと」


「獣人のことも気になる。そちらの方はどうだ?」


「エルフと同様です」


「エルフの国と獣王国はここ最近人とのつながりを断っているという話なのに

戦争には介入するということか?」


「エルフの国と獣王国の旗はなかったと言っていました」


「わからん。まったくわからん。

獣人やエルフの集落がそのへんにいるという話も聞いたことがない。

やはり見間違いなのでは?」


話し合いが再開されたが話題は作戦ではなく背後に誰がいるのか

黒幕はどの国なのかという予想や憶測が混じった話になりつつあった。

見かねたガイマンドが、話を中断させようと声を張り上げようとした時

男が立ち上がり机を豪快に叩いた。突然のことに皆驚き固まる。


「別にどこが支援してるなど、どうでもよいではないですか!」


「な、なにを」


「まずは目の前の敵を倒しましょうよ!ところで、ドラムピ国王陛下」


「なんだろうか」


「契約では、捕虜については捕らえた者の所有とありましたよね?

エルフを捕まえた場合、契約を反故にしたりしませんよね?」


「するわけなかろう!」


「それはよかった。いやーエルフとは楽しみですな。

何しろエルフは高く売れますからな」


高く売れると聞いて何人かが興味を持つ。


「高く売れるのか?」


「そりゃあそうですよ。エルフに醜い奴なんていませんからね。

みんな美しい顔と整った容姿、そしてなんといっても

人間と違って年を取らない。餌さえ与えとけば若いままですよ。

人間は何年か経てば使い物にならなくなっていきますがエルフは違います。

見た目そのままで生き続けてくれるので使ってよし!売ってよし!

と呼ばれていますよ」


「ほう」


使うという言葉にダロンを含め何人かは笑みを浮かべる。

高く売れるのもいいが、そんなにいい物なら一つでも欲しくなってくる。


「獣人はどうだ?」


「獣人は無理ですね。せいぜい戦闘奴隷か労働奴隷ってところです」


「使えないのか?」


「あまりおすすめはしません。奴らは爪とかが武器ですからね。

暴れられたら大変ですよ。それに獣人は獣臭く毛深いものが多いですからね。

あまり楽しくないですよ。獣人は売るのが一番です」


「なるほど、これは楽しみになってきた」


皆がやる気を出したのを見てガイマンドは軽くため息をつくと

陣形について話し始めた。


一方その頃、アルファノア国軍は他の軍と違って静かだった。

兵たちの雑談や震えて鎧をぶつけ合う音すらしない静寂である。

アルファノア国軍本陣では作戦の説明や計画の会議は一切なく

みんなが所定の持ち場につき開戦の合図を待っていた。

作戦など必要なかった。

なぜなら、彼らはやることがわかっていたからだ。

すでに王から命令をもらっている。

あとはそれを速やかに実行するだけなのだ。


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