30
残った二国はそれぞれ自国に思うところがあった。
シュグニテ国王マルギスは、自国の事業が長くは続かないとわかっていた。
魚食するのは自国の民のみ。
海魔獣の肉は輸出用だから、あまり自国の市場に出回らない。
果物や野菜は作っているところが少なく内陸部のみだ。
内陸で生まれた子は一獲千金を夢見て海魔獣ハンターとして旅立つ。
肉は国が買い取ってくれるので、畑をいじっているより儲かると思われていた。
しかし、大儲けするにはハンターとしての技術と運が必要だった。
ハンターを目指す若者の多くは、海魔獣狩りで命を落としていった。
かといって、ハンターになるの禁止することもできない。
海魔獣ハンターは人気職業の一つ。
強大な海魔獣に果敢に向かって倒す姿に子供たちは憧れた。
禁止することで、狩る者が少なるほうも問題である。
マルギスは国を更に発展させるために苦労していたが、この王らしからぬ王に
現状何とかしてるのかもしれないと一抹の希望をかけたのである。
ヒュノウミ王クウィーリーは民のことを第一に考える王だった。
金の輸出とその埋蔵の豊富さからヒュノウミ国は裕福に見える。
だが、国土の大半が砂漠であるこの国の民は飢えと渇きに苦しんでいた。
多くの大きな都市は、水が豊富に沸いてくる土地に築いてあった。
そのため、それ以外の場所で住む民は岩山の水が少しでも沸く場所に住んでいた。
そこに住んでいる者の多くはバンバブという植物で飢えをしのいでいた。
バンバブは砂地では育たないのだが、日陰の岩に植生する特性がある。
茎や葉っぱを焼いて食べ、果実は水分補給にちょうどいい。
根はたき火の燃料に適している。
すべてを満たしているこの植物だが、欠点もあった。
成長が遅く、栽培方法も難しい。
バンバブの農場を作ろうと何十年もかけているが未だ成功した例はなかった。
それならば、都市に住んでいる民はどうかというとこれもまた辛い日々であった。
上流階級の特に金を売買している商人は裕福であったが、最下層の民は悲惨だ。
水があるので農場や牧畜で食糧生産は順調だった。
しかし、増えていく人口に農場の生産は追いつかず、野菜や肉のほとんどは
上流階級に流れていった。
穀物類のほとんどは輸入物で育てる場所も限られていた。
貧しい民たちは、都市の外へ食べ物を探しに出て行方知れず。
魔獣に襲われたか都市に帰れなかったか。
そんな民たちが増加傾向にあり、クウィーリーはいつも頭を悩ませていた。
どうすればこの民たちを救えるのか、と。
クウィーリーは王に問う。
「あなたは民の豊かな生活を保障すると言った。その言葉に偽りはないか?」
「ない。その証拠に我が国の民たちを見てきてはどうだろうか」
クウィーリーは、王都に来るまでの間民たちの様子は十分に見て来た。
金持ちの商人と王族くらいしか食べれないパンを農民が
普通に食べてるのを見ていた。
「我が国は貴国に従属する」
クウィーリーはジンに頭を下げ跪いた。
マルギスもそれに続いて跪く。
「我が国も同じく貴国に従属する」
ジンは二人をしばらく見た後口を開いた。
「従属を認めよう。二人ともまずは国に帰り国民に説明するとよかろう。
いずれ、我が国から人を行かせる。」
「「わかりました」」
二人が出ていくと、ジンはゆっくりと息を吐きだした。それから目をつむる。
(早くない?三か国と戦争する気満々だったんだけど)
自分が予想していた状況よりいい方向に進んだことは喜ばしい。
なぜ二国があっけなく従属を選んだのかはさっぱりわからなかった。
その後、ジンはマキシアリとバロと大臣たちから挨拶され、数多くの貴族たちから
見られ声をかけられることとなった。
途中で退出したドラムピ王のダロンは国に戻る馬車の中にいた。
「なにが従属だ!統一だ!ふざけおって!」
顔を見るだけにわざわざ訪問したのに、これから国を攻めると言われたら
不満を表すのは当然だ。
他の二国が自分に従わなかったのは予想外だったが。
馬車の中で怒りを爆発させ暴れた後、伝令に命令書を渡す。
「我が国を疎かにすればどうなるか思い知るがいい」
数日後、ドラムピ国はアルファノア国、シュグニテ国、ヒュノウミ国への
塩の輸出を全面停止を発表した。
また、アルファノア国の流通路の問題があるとして、
北大陸への塩の輸出を一時的に制限することもまた発表した。
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