28
その日、アルファノア国王城にいるキャラ達に動揺が走った。
突如ジンが外出をすると言ったからだ。
といっても、その程度のことで顔にでる程ヤワな存在達ではない。
みんな平然とした顔立ちをしていた。
誰かがどこに行くのかと聞くと、ジンは他国の王を迎えるためだと答えると
どよめきが大きくなった。
今まで、ジンの行動範囲は王城内の謁見の間と自室のみだったからだ。
そんな、引きこもりの王が外に出るというのだ。
公式の場で他国の王に顔を見せるために。
しかし、領土内とはいえ他国に近い訪問先で危険がないというわけではない。
暗殺される可能性だって十分にある。
どよめきは静まったかに見えたが、それとは別の相談が始まった。
『誰を護衛に連れて行くのか?』
『完璧に安全にしなくてはならない』
『防御系スキルで固めるか?』
『もし陛下を狙うのであれば確実に屠らねば』
『ならば防衛を主として攻撃職を置けばいい』
『移動はどうする?』
『投入できる兵士数はどうだ?』
『3000といったところか』
『少ないな』
『全員が訓練済みだ。実戦を経験している者もいる』
相談する声はだんだん大きくなっていき、大きな騒ぎへと発展していった。
「あーちょっといいか?」
思ったより大きな騒ぎになってしまったので、ジンは威厳などを忘れ声をかけたが
騒ぎにかき消されてしまった。
ドン!
「静かにしろ!陛下の御前だぞ!」
大きな音と衝撃に加えそれに見合う大声が広間に響き渡った。
ジンの隣にいたエヴァが剣の鞘で床を叩いたのだ。
一瞬で静まり返るキャラ達は自分たちがどこにいるのかを再認識した。
「陛下、お言葉をどうぞ」
音と衝撃に驚いていたジンであったが、慌てて取り繕うと改めて言った。
「移動に関しては気にしなくていい。なぜなら、私の能力で移動できるはずだ。
兵も現地の者を使う予定だ。ちょうど出来上がっているからな」
ジンがそう言うと何人かは落胆の表情を見せた。
その何人かはジンと一緒に出掛けられるいい機会だと思っていたからだ。
もう一度言うが、ジンは城から全く出ない。
執務室と謁見の間を行き来する場合は、
大抵エヴァかランスロットが護衛に付いている。
寝室の前は、レジェンドレアのいずれかが守っている。
つまり、これら以外のキャラが王と触れ合う機会は滅多にないのだ。
彼らは王のことを、ある者は心酔し、ある者は神のように敬い、ある者は愛し、
そして絶対的な忠誠を誓っている。
王の護衛に抜擢され、王の馬車を守り、王と共に移動する
という夢を描いていたわけである。
「しかし、陛下。現地の兵だけでは心許ないですぞ。せめて、護衛を」
「わかっている。さすがに誰も連れていくわけじゃない」
その言葉を聞いて期待の目がジンに集まる。
ジンは一瞬怯むもなんとか無視することができた。
「護衛はエヴァ、レオン、アンゼリカの三人だ」
名前を告げた時、隣にいるエヴァの表情が一瞬嬉しそうに見えた。
すっかり、王の護衛役の地位に就いてしまったエヴァ。
その能力と職業は誰かを守るにはぴったりだからだ。
彼女の職業は守護騎士(ガーディアン)。
騎士のイメージといえば馬に乗り盾を持って戦う姿が印象的だ。
そんな騎士でもいくつか種類がある。
その内の一つが、守りに特化した守護騎士だ。
エヴァのレア度はSSR。スキルは4つ。
特にパッシブスキル『シールドガード』が強力だ。
シールドガードは対象に不可視のシールドを張ることができるというもの。
これにより、エヴァがいる際は常にジンの周りにシールドが張られている。
レオンは攻撃特化型のLR。スキルは6つでどれも攻撃型だ。
護衛にレオンを入れたのは彼が集団戦を得意とするからである。
彼は攻撃特化型だが実際は攻撃特化のなかでも範囲殲滅型という分類になる。
複数の刺客が来た場合や取り囲まれている場合を想定している。
アンゼリカの職業は修道女。レア度はSSR。
一般的に修道女と聞くとヒーラー(回復役)と思われるがちょっと違う。
彼女の正確な役回りは前衛回復支援。
回復もでき、前衛の支援もでき、攻撃もできる。
万能ともいえるし器用貧乏ともいえる。
分かりやすく言うなら、魔法戦士のヒーラー版だ。
彼女を起用した理由は、後方支援タイプにもかかわらずその頑丈さだ。
しかも、他のヒーラーと違い自衛ができる。
そして、スキルの一つに魔法防御を高める『マジックシールド』がある。
この世界に魔法があるかどうかはわからない。
だが、ないことを前提に考えるにはリスクが高いと判断したのだ。
「三人を予め送ったあと私が行くわけだ。いいな?」
「はっ!」
ジンはこのあと訪問日を少し緊張しながら待つこととなった。
しかし、ゲームシステムが使えるというのは便利なものだ。
移動という手間を省くことができる。
今回護衛役は、システム画面内で都市と建物を選択しそこに配置するだけだ。
ジンの移動も同じような感じだ。
まず、行きたい都市と建物を選択する。
すると、
〈移動しますか?はい&いいえ〉
という選択画面が出る。はいを選択するだけでその場所に瞬間移動できるわけだ。
非常に便利であるが、欠点もある。まず、領土内限定ということ。
そして、一定の人口数に達した町であること。
仮に、山や草原を選択しても移動する画面はでてこない。
条件として、土地と都市と建物を必ず選ばなければいけないのだ。
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