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都市アルーム。以前まで王都アルームと呼ばれていた町は王都という名を失っても賑わいは衰えることがなかった。          

むしろ、以前にも増し町は大きく賑わい、人々はより集まってくるようになった。

王宮は都市の貴族街にある屋敷に移された。

以前の場所では丘を登らなくてはならず、行き来が不便だったからだ。

そこで、とある大貴族から接収した屋敷を急遽王宮に仕立て上げたのだ。

そんなある日、街中をある一団が王宮を目指して進んでいった。

都市に住む人々は、みなだれもが王宮に王が住んでおり

統治を行っていると信じていた。だが、実際のところ王宮に王はおらず

王の代理と補佐役の宰相に各大臣が政治を取り行っていった。

王の代理であるマキシアリと宰相のバロが昼食を取り、

午後の政務に取り掛かろうとしていた時、秘書官が入室しバロに来訪者が

来たことを知らせた。


「なに?ドラムピ王国の使者が?」


「はい。先ほどお越しになりました」


「用向きはなんと?」


「そこまでは…」


「いかがなさいますか?」


「会おう」


マキシアリが会うと言ったのでバロは彼に付いていく。

使者との会談場所は謁見の場ではなく、通常の部屋となった。

謁見の間はあくまで王と会う場所であり、代理である自分が使うことはできないと

マキシアリが拒んだせいだ。

使者がいる部屋に二人が入ると、座っていた男は立ち上がり仰々しく

挨拶を述べた。その後、長々と王を敬う口上を始めたので

マキシアリは鬱陶しそうに中断させ事実を述べた。


「待て。まず、先に訂正しておく。私は王ではない。王より代理を任された者だ」


「なんと!では、国王陛下は今どちらへ?」


「陛下は今ここにはいない。それより、用件はいったいなんだろうか?」


「・・・わかりました。いずれ会えることを願いましょう。こちらの用件ですが、近日中にドラムピ国王陛下の訪問をお伝えしに来た次第でございます」


「国王陛下が訪問ですか?」


「はい。新たな国とその国王陛下への挨拶を行うとのことです」


「なるほど」


「訪問の際は必ずジン・アルファノア陛下とのお目通りをお願いします」


「陛下に伝えます」


「それでは私はこれで」


そう言うと使者はそそくさと退出していった。

使者が出て行った後バロはマキシアリに聞く。


「陛下はこちらに来れるのですか?」


未だにバロはジンの顔を見たことがない。

併合後、新たな国になり新たな王ができたわけだが仕える王の顔を

見たことがないのは前代未聞だった。

さすがに、他国の王が訪問するのである。

代理で済ませるはずがないと思い、期待を込めて聞いたのである。


「わからん」


「は?いや、しかし、」


「私は陛下に伝えると言っただけだ」


「あのぅ・・・」


バロに秘書官が申し訳そうに声をかける。


「なんだ?」


まだ、いたのか。そんなふうに聞くバロ。


「シェグニテ王国の使者が来ておりますが」


「なにっ!」


バロは慌てて部屋に通すように命じる。

シュグニテ王国の使者の目的もドラムピ王国の使者と同じ内容だった。

使者を見送って一息つこうとした時、ヒュノウミ国の使者が来た。

ヒュノウミ国の使者も同じ内容であった。

バロとマキシアリは顔を見合わせる。

周辺三国の使者が立て続けに来て、王の訪問を告げていくのは

明らかに何らかの意図を感じるからだ。

一国だけであれば、何かと理由をつけて代理で済ませられるかもしれない。

しかし、三か国となれば話は別である。

代理で済ませた場合、なにが起きるかわからない。

変な噂が広まれば、この国は崩壊するかもしれない。あるいは、戦争か。

様々な不安にバロは身震いをすると、マキシアリに重ね重ね

ジン国王陛下に来るようお願いした。


マキシアリからのメッセージを受け取ったジンは困惑した。

周辺国々のトップがジン目当てに訪問するなど意味が分からなかったからだ。

マキシアリからは詳細な情報はなく、会いたいという以外の目的がなかった。

少しの間、考えたあと出向く旨をマキシアリに伝えた。

アルファノア国がこの世界に来てから数十日、これがジン初めての外出であった。

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