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容易ではないことを命じたら簡単に成し遂げてしまった。
『あのようなこと造作もありません。それで次は?次は?』
心ではそのようなことを思っているのではないか?
期待と羨望の眼差しで見つめてくる家臣たちを見ながらジンは思った。
(どうしよう)と。
正直なところ、王国を取ると言ったはもののもう少し時間がかかると
思っていたからだ。
まさか、命じた数日のうちに達成されるとは思わなかった。
(大陸制覇とかすぐ終わってしまうんじゃないか?)
ジンを驚かせていたのは他にもある。
作った兵士が有能というのはわかるが、それ以上に今いるキャラ達が
思った以上に強かったということだ。
戦闘が起こったということなので、どういった風に戦っているのか気になったためネイハムにその時の様子を事細かく報告させたのだ。
(なんだよ、一撃で3、4人をバラバラにするって)
ヴァルトは確かに強い。それはよく知っている。だが、それはゲーム内での話だ。
ヴァルトの職業は狂戦士と呼ばれ、己の爪を武器に戦う。
狂戦士は単体火力としては強く、集団戦には少し弱く感じる。
だが、そこをカバーされているのがヴァルトのスキルの一つ。
常時発動型(パッシブ)スキル『猛獣の目』。
この目に見られると恐怖状態となり移動速度の低下、攻撃力10%ダウンが起きる。
先頭にヴァルトを置き、弱体化した敵集団を倒すことができる。
ヴァルトはこのスキルのおかげで、集団戦に強くなっているのだ。
また、ボス級の単体の敵に対しては、
指向発動型(アクティブ)スキル『十三連爪』がある。
出血効果を持つ連撃でこちらも強力だ。
三つ目のスキルは『狂気化』。
これは条件発動型スキルでヴァルトの体力が30%以下になった場合発動する。
移動速度や攻撃速度、攻撃力、防御力といった能力がすべて通常時の2倍になる。
加えてヴァルトのレベルは最大の75。
(スキルが発動していない?通常攻撃のみってことか)
それでも脅威だ。ヴァルトのレア度はSR。
この上にあと二つもいるのだ。LR級など想像がつかない。
(今はやめておこう)
ジンは考えるのをやめた。そして、実現可能そうな命令を下す。
「聞け!リトビエ王国を制圧後は南大陸の統一だ!
リトビエ王国周辺の国をすべて潰し我が国に吸収する!
だが、まずは国力を高めることだ。国民の教育レベルを上げ、兵力を強める。
私はやることがある。あとは、任せたぞヘロルド」
「はっ!」
ヘロルドが他の者たちを集めて話す中、ジンは自室へと向かった。
扉を閉め、楽な態勢で画面を開く。
少し気になったことがあった。
確かに、王国は倒れアルファノアに吸収された。
しかし、王は元王国領地におらず城に籠ったままだ。
この状態で操作ができるのか?と。
それは、画面を開いたことですぐにわかった。今までないものがあったからだ。
財政状況や法律の制定、国全体の教育レベルなどが増えていた。
まるで、都市育成シュミレーションゲームそのものようだった。
建造物は前の倍以上増えていた。
学校、役所、公園などの公共物、生産施設は水産業、農業(各種麦、野菜、
果実から選択)、狩猟、林業、鉱業などでそこから加工施設がずらっと並ぶ。
兵士の訓練場も弓兵、槍兵、騎士、剣術、騎兵とある。
いきなり表れたおびただしい情報量に圧倒されそうになるが、この程度であれば
ゲーム内と変わらない部分もいくつかありさほど気にならなかった。
むしろ気になったのは、教育レベルの低さと兵士の少なさ、財政収支である。
教育レベルの低さの理由は、都市内に学校がなかったからだった。
貴族高等学院とかいうよくわからない建造物があるだけで、
平民向けの教育施設はない。
国人口のわずか数%の人間が貴族であり、貴族だけが教育を受けているのであれば納得といったところだろうか。
学校を周辺地域に治まる位置に何個か置き、平民が受けられるように
法改正を行う。この法改正もジンが指示した後どうなっているのかわからないが
正常に機能しているのであれば、細かいことは気にしないことにした。
次に兵士の少なさだった。これは単純に戦争後だから仕方ないだろう
と思っていた。だが、よく見ると兵士の種類は槍兵と弓兵と騎兵だけで
騎士の数は非常に少ない。しかも、何も訓練されていない兵士だけが大量にいた。
そこで、足りない兵種にそれらを振り分けると今度は兵士の数が足りなくなった。
仕方ないので、兵士訓練場を増設して放置する。数がいる分時間がかかるからだ。
次は財政だ。収支表を見ると、妙なことに収入は毎月で金額もまちまちだった。
しかも、税金の種類はとても豊富だった。
人頭税・農地税・農地譲渡税・死亡税・相続税・施設使用税・住民税・
通行税・市場税である。
いらない税金のチェックマーク素早く外す。
廃止するのは4つ。人頭税・農地税・死亡税・施設使用税。
収入の大半を占めていた人頭税を失い赤字になるが気にしない。
問題はむしろ住民税だ。都市の人口と収入比率が食い違っていたのである。
また、法改正を行い住民全員の登録を行い住民税を正しく取れるようにする。
他にも消費税の導入などがあったが教育レベルが足りず行えなかった。
(今日はここまでにしておこう)
すでに外は夜だった。
ベッドにそのまま入り眠りに就く。今日も不思議と空腹感は感じなかった。
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