リシアの初日②+α(外伝)

「うううーん」


 窓から照らす日の光がリシアを目覚めさせる。

 リシアは自分が硬い地面に寝転がされていることに気づくのに

 そう時間はかからなかった。

 ガバっと起き、自分の状態を確認する。衣服は昨日のままだ。頭が若干痛いが

 体に傷は見られない。目の前には、金属の格子。周りは石の壁。

 つまり、ここは牢屋だ。

 なんでここにいるのかさっぱりわからない。いつの間にここに移動したのか。

 恐らくだが王の寝室の前にいた女性が関係しているはずだ。


「おーーーーーい!だれかーーーーーー!」


 大声で叫ぶが誰も来ないし答えなかった。

 そもそも周辺に人の気配がしない。

 リシアは誰か来ることを祈って叫び続けた。



「陛下、おはようございます」


 ジンを起こしに侍女が入ってくる。

 侍女に関しては、ゲーム内にそもそもいなかった存在だ。

 城の増築をし始めた頃、城のオプション選択画面に侍女と衛兵の項目があったため

 選択したところ生成されたのだ。

 侍女の名前はないのかわからないが、呼べばくるし、城内の整備をしてくれるので

 非常に助かっている。

 侍女は、部屋のカーテンを開け、日光を取り入れ、ジンの支度をする。

 その間に、昨日の部屋番が入ってきた。

 部屋番を誰がやるかでキャラ同士が争いを始めそうだったので、

 ジンがその日の内に指定することで纏まった。

 幸い戦争用のキャラはたくさんいるし、まだ出番もない。

 ソートして順番に指名することにした。昨日の部屋番は桜花だ。

 桜花は仰々しくジンの前に跪くと昨夜の出来事を話した。


「陛下、暗殺者を捕らえました」


「暗殺者?」


「はい、昨夜陛下の部屋に忍び込もうとしていたので」


「そいつはどこにいる?」


「今は牢屋に入れております」


「そうか、よくやった。下がっていい」


「あ、ありがとうございます!失礼します」


 桜花はジンに褒められると顔を赤らめると、嬉しそうに部屋を去って行く。

 桜花を褒めたはいいもののジンは戸惑っていた。なにしろ、未だどことも

 戦争状態に入っていないし接触すらしていない。

 唯一接触したのはエルフの集落のみだったからだ。

 いったいどこが送ってきたのだろうか不思議だった。

 システムを呼び出し、城内マップを選択する。

 端っこのほうにある牢屋を選択し、拘束されている人物の詳細を見た後、

 ジンは先ほど言ったことを後悔した。

(リシアじゃん!桜花なにしてんの!?)

 外にいる兵に声をかけ、リシアを牢から出すように命じる。

 それと、全キャラに向けてリシアの存在を認識させるようにした。

 彼女はもうジンのものだということを。


リシアの初日(終)

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兵に引きずられてレキスタは殺風景な場所に連れてこられた。

部屋の中央にはぽつんと何かの台が置いてあり、その周辺には溝のようなものが

広がっていた。

レキスタは何が起きるのか悟った。何が自分に行われるのかを。

兵士がレキスタの身体を押さえつけ固定する。

すると、レキスタの目の前に大きな獅子の顔をした獣人が現れた。

一抹の望みをかけて、声を出せないにも関わらず必死に命乞いをするレキスタ。

しかし、願いは叶わず、獅子の口は開いた。


「黙れ。囀るな。貴様の死はすでに決まっている、変えることはできない。

だが、少しでも安らかに逝けるように手伝うことはできる。

なぜ、自分が処刑されるのかという疑問があるはずだ。

それに答えてやろうという儂のただのお節介でもある。

少し長い話になるが、我らが王が建国するのは初めてではない。

ああ、この地では初めてだがな。別の土地で世界では何度もあった。

最終的に王が死ぬ時も何度かあった。大勢の仲間を失った時もあった。

それらが起きた時、我らは始まりの地と儂は勝手に呼んでいるが

そこに呼ばれる。つまり、やり直しだ。回数を重ねるごとに仲間は増えていき

そしてある時、初めて我らの王が城内を歩き回った時、この地に行きついた。

始まりの地だ。そのように我が王は何度も建国を繰り返してきたのだ。

そのような王が他にいるか?国を世界を一から何度も作り直せる神のような王が。

我らが神に最も近しき王に貴様の偽りなど通用せぬ。我が王はすべてを見通す目と

無から有を作り出す手を持っているからだ。貴様があの場に現れ、なにを感じ、

頭の中で考え、心で感じたことすべて王に筒抜けだったのだ。

そして、王は判断した。その結果がこれだ。見ろ、処刑というものは本来、

命じた王が見届けるものだ。

誰かいるか?いないだろう?つまり貴様はその程度の存在だったのだ」


レキスタは獅子の言葉に圧倒されたが嗚咽をだすようなことはできなかった。

彼女の胸に槍の穂先が生えていたからだ。

血は流れなかった。槍から炎が広がり、レキスタの美しい肌は黒く焼けていく。

炎はレキスタを包み込むと、静かに消えて行った。

残されたのは黒い何かだけ。黒い鎧姿のレオンが槍を引き抜くと黒い何かは

崩れ去った。


「この程度の存在にそこまで話す価値はない」


「レオン・・・」


抗議のうなりをあげ、握りこぶし作り戦闘態勢に入るもすぐにやめた。

勝ち目はない。それに王はこの戦いを望まないだろう。

二人は静かにこの場をあとにした。

あとに残されたのは何かを焼いたようなにおいだけだった。


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