17

依頼受けた3人はベルファロン平野の近くの森、

グッコーの森と呼ばれる場所に来ていた。

職員から絶対に奥に行かないようにと念を押され、

特に山の近くとその先は大変危険だから絶対に近づかないようにとまで言われた。

3人はその絶対に行ってはならない森の奥、山のほうを不思議そうに見ていた。


「行くなと言われても。私たちあそこから来たのに」


と、リザ。


「そもそも奥地から来たなんて言ってないし」


と、ジータがリザに言う。


「でもしばらくは行くことはできませんよ。だって、任務がありますもの」


その二人にソフィーが言う。

ジンからもらった任務は一つ。

一つは傭兵になり王国内部の調査。内部といっても国中枢のことではない。

国内の状態のことだ。王国民の私生活や食べ物、通貨など。

どんな暮らしをしているかを細かく調査する必要がある。

そのためには金が要るが残念ながら金銭の類は与えられてない。

そのための傭兵もとい冒険者だった。

冒険者で稼いで調査に専念しなければならない。


「そうね、さっさとこの依頼を終わらせて次にいかないと」


そう言ってリザは剣を抜き身構える。


「ギッギッギッ」


3人は悠長に魔物が潜む森で声をたてて話していたわけではない。獲物がくるのを

待っていたのだ。茂みから現れたのは3体の人型の魔物。ゴブリンだった。

人より半分くらいの大きさで、腰に毛皮のようなものを巻き、手に持った棍棒で

リザに襲い掛かる。リザが剣を振るうとゴブリンの胴体は別れ絶命した。


「ギッギッ」


ゴブリンの声は鳴りやまない。どうやら先ほどの3体は斥候だったのか。

ゴブリンたちは3人を囲みつつ襲ってきた。

襲い掛かってくるゴブリンを盾で弾き一撃を入れて倒すジータ。

炎は使わず剣を振ってゴブリンを切り刻んでいくリザ。

杖で撲殺していくソフィー。

ほどなくして、取り囲んでいたゴブリンはあっという間に全滅してしまった。


「28、29、30、31、32、33!13体多いわ」


「依頼は確かゴブリン20体討伐のはずよね。この場合どうすればいいのかしら」


「とりあえず持って行けばいいのでは?」


3人はゴブリンの耳を切り取り急いで帰ることにした。

ギルドに戻り依頼を受けまた出ていく3人をギルドにいる冒険者たちは

遠巻きに見ていた。

噂はすでに広がっている、あの金級冒険者ダンを

一騎打ちで潰した娘を含む新鋭の3人組。依頼達成の速さも見る限り驚異的だ。

普通なら初めての仕事は緊張と達成感による興奮で帰ったら食事をして

明日に備える。酒場で一晩盛り上がる場合もある。

冒険者たちはひそひそと聞いたこと見たこと事実が入り混じって

嘘か本当かわからない噂話をみんなでしていた。

そんな冒険者たちをちらりと目にした後、職員は討伐数と達成数を彼女らの書類に書いた後耳を処分する。耳はあくまでも討伐の証、何の役にも立たないのですぐに処分するのが規則だ。そして、次の冒険者の報告を聞き

次へ次へと作業をしていった。



【ゴブリン】

大人の半分くらいの大きさで子供よりやや大きい人型の魔物。

全身が濃い緑色をした肌に尖った鼻と長い耳、大きな目と突き出した歯が特徴。

繁殖力は驚異的。1匹いたら10匹いると思っていい。

腰に布のような物を巻いている。ゴブリンを単純で頭が悪い雑魚だと思っていたら

それは間違いである。確かに1匹であれば脅威は大したことがない。

だが、それが3匹以上の集団であった場合の脅威は相当なものだ。

武器を使い、布(どうやって手に入れているのか不明だが恐らく狩った動物の皮で作られていると考えられる)を巻き、集団で襲ってくるところから頭は悪くない。

非常に凶悪な生物で、武器を持った人だろうが子供ですら襲う。

襲う理由は単純に食料としてだろう。食性は肉食を好むが

農家の畑で作物を荒らすことから雑食性だと思われる。

繫殖について様々な意見がある。人の女をさらって交配すると思われがちだが

そもそも人里から女性だけを生かして連れてくるのは非常に危険を侵す行為だ。

複数人の女性を拘束して連れていく行為は人間でなければ無理だ。

加えて、人が籠るのはせいぜい1~2人。繁殖能力がいくら旺盛だと言っても

母体も体力を使うし栄養がなければ胎児の発育も悪い。

捕らえられた人がゴブリンの食を受け入れられるとは思えない。

そこで、私はゴブリン卵生説を推したい。

ゴブリンの繁殖力の高さから恐らくゴブリンの母なる存在がおり(以下略)


冒険者協会所蔵本

『魔物の生態と特徴』オロフ・ヘーバルト著より抜粋








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