11

夜通しの行軍のおかげで、夜明け頃には集落に着いた。

集落までの行軍は順調だった。魔獣との遭遇などが少なかったのは

先頭を行くレキスタのおかげだったといえよう。

集落に到着時、レキスタは多くのエルフ達に囲まれた。

多くの疑問は人間の軍隊が来たからだったが、なかにはリシアがいないことを

気にする者も若干いた。

ジャッドが、何人かの兵たちを集落の防衛をするよう指示している間に、

レキスタは集落のものたちを集め、事情を話した。

曰く、

彼らは味方である。

彼らの要求はエルフを一人、王に献上することであった。

リシアがこれに立候補し、彼女はそれを受け入れた。

王はこれに大変満足し、彼女の献身的な態度に心を打たれ、強力な臣下と兵を

送ってくれた。


そのようなことを話すと、エルフ達は喜び、レキスタを称賛をする声で埋めた。


しばらくすると、急に兵たちの動きが慌ただしくなり、若干名を残して兵たちは

集落を出て行った。

レキスタは不思議に思い、護衛に話を聞くと


「襲撃者たちと思われる人間の集団が、向かってきてると斥候から連絡が来たためこれを迎撃するとのことです。」


襲撃者!とならば、急いで避難しなければならない。

レキスタは、老人や子供を集落で一番頑丈な場所へ避難させることにした。

けが人はすぐに動かせないのでこの際仕方ないと割り切った。



集落の外では、襲撃者と兵たちが戦っていた。

襲撃者達は、集落を守るように現れた兵に若干戸惑いを見せたが、

すぐに襲い掛かってきた。

戦であれば、戦う前にお互いの代表が名乗りを上げ、属する国名を言い

いくつか言葉を交わした後、ぶつかり合うであろう。

だが、襲撃者達は事情があって属する国名を言えない。

よって、目の前に兵士たちがいたとしても野盗の如く

突撃するしかなかったのだ。


エルフ狩り部隊の副長を務めるアルポは戦いの最中に隊長とはぐれてしまった。

威勢よく突撃していったものの相手の兵はなかなか倒れず、こちらの兵は一方的に

倒されていった。そのため、隊長に撤退を意見しようと思ったからだ。

探し歩くにつれ、だんだん周りから戦いの音が消えていった。

そして、自分が周囲に木々のない広場にいることに気づいた。

周りは薄い煙に包まれ遠くは見えづらい。

地面は真っ黒に染まり、黒い物体があちこちにあるのがわかった。

物体の正体を掴もうと触ると、それはボロボロと崩れ落ちていった。

アルポは近くによって初めてそれが人間の死体であるということに気づいた。

地面を触ってみると温かく、周囲がまだ熱を持っていることを感じた。

もし、アルポがもう少し注意深くこの広場に入っていれば周囲に

まだ燃えている木があり不自然に思ったはずだ。

この先どうなっているかわからない。だが、アルポは先に進むことにした。

この先にもしかしたら隊長がいるかもしれないからだ。

しばらく歩くと、前方になにかが立っているのがわかった。

人だ。それも真っ黒な鎧を全身に纏い、右手に細長い槍を持っている。

(生存者か?それとも・・・)

アルポは目の前の人物が周りの惨状を引き起こした本人であると自覚する直前、

彼は炎に包まれた。息ができなくなり、思考は停止。痛みと苦しみで彼は死んだ。

アルポが息絶えた後も炎は消えることなく、完全に燃えきったあと炎は消え、

また一つ周囲にある死体と同じものが出来上がった。


「レオン殿、今のが最後ですかな?」


「はい」


「しかし、凄まじい威力ですな。いったいどんなスキルを使用されたので?」


この問いにレオンは答えることなくジャッドに視線を向ける。

慌ててジャッドは話題を変えることにした。余計なことを聞いた気がしたからだ。


「戦闘は今ので終了です。隊長らしき人物はシキ殿が捕縛しました。わが軍は

損失なし、怪我人はいますが問題ありません」


「では、陛下とエルフの長に報告をお願いします。私は生きているものがいないか

見回ります。」


そう言うと、レオンは炭化した死体以外の死体に槍を刺す。

すると炎が上がり燃えていく。炭化した死体が量産されていくのを見ながら

ジャッドは王に報告し、レキスタに報告するため集落に戻るのであった。

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