10
レキスタが別室でリシアを説得している頃、謁見の間。
ジンは臣下たちの熱い視線に囲まれていた。
この世界に来て初めての戦闘がこれから始まる。
その選出を誰になるのか。自分こそがいや自分こそがという想いが高まり
ジンに向けて無言でアピールしているのだ。
アピールというのであれば、声を高らかに上げ、自分の得意分野とスキル、能力を
説明し、いかに自分が相応しいかを言えばいいのだが、王からそのように
命じられてはいない。
ましてや、深き考えを行っている王の思考を妨げてはならないのだ。
あらかじめ、シキを送っているので集落の場所も集落にある宝や隠しているのものもすべてわかっている。問題は送り込む兵士と編成だった。
兵士はすでに訓練場ができているので出撃できるのだが、問題は人数。
まだ、ゲームでいう序盤の段階で、国としての人口が低い場合、
兵士の数も限られてくる。あらかじめ、防衛用として人間の槍兵を生産してあったが訓練済みを集めても200人が限界。
200人の部隊に指揮官と副官を入れて202人。
戦闘系のキャラをあるだけ追加しても300にも満たない。
しかも、この世界での戦闘は今回が初めて。相手の能力は未知数で自分たちと相手ではどれぐらい差があるかすらわからない状況だ。
だからこそ、数が必要だった。もちろん、あるキャラを使えばこの人数を倍に増やすことが可能であるが、今はその手段に頼りたくなかった。
故に、(指揮が高くスキルで防御が上がるやつを指揮官に火力特化のやつを副官にして様子を見よう)となった。
(誰にしようかな?)あてはまる人物を一覧からソートし、眺める。
(指揮官はジャッドでいいか。SRだし、スキルも優秀だ。
副官は試しにレオンにしてみよう)
編成画面を開きキャラを呼び出す。
まずは、ジャッド。
全身金色の鎧を着た偉丈夫が現れ跪く。特徴的な鎧と大柄な体格のせいで貴族かもしくは派手な鎧を着た戦士だと思われがちだが、ジャッドの基礎能力は
そこまで高くない。スキルは部隊を指揮時における部隊全体の防御力アップと持続回復、それと行軍スピードの上昇である。
「ジャッド・ファーニヴァル!参上いたしました!」
次にレオンを呼び出す。レオンは、ゲーム頂点のレア度。レジェンドだ。
ゲーム内では、キャラクター画面に謎のエフェクトが入っていたり、
ゲーム序盤で領土を荒らしまわる盗賊集団を単体で殲滅してしまうほど
強力なキャラだ。
全身を黒い鎧で固めて戦士が現れる。
黒い覇気あるいは波動みたいなものを吐き出しながら現れたレオンは
ジンの前に跪く。
「竜戦士レオン・カーマイン・デッカー、御身の前に」
ジンの周りのキャラ達の顔色が悪い。レオンの隣のジャッドなんかは震えている。何人かは青ざめ今にも倒れそうだった。
「レオン、その波動みたいなものは抑えられないか?何人かが倒れそうだ」
「可能でございます」
そう言うと、レオンから発せられていた波動は消え去る。
顔色が元に戻って安心だなと思ったジンだが、それでも青ざめた表情のものや
汗を流している何人かを見て困惑する。
(エフェクトのせいじゃないのか?パッシブスキルにも該当しないし、
レア度かレベルのせいかな?)
レオンというよりレジェンドレアとSSRのキャラは
本来ゲームに存在しないキャラだった。
隠しキャラや特定条件で仲間になる者でもがせいぜいSRまで。
ゲーム紹介で『使えるキャラクターは200人以上!』と書いてあったが
実際は色々条件やフラグを回収、始める国次第では仲間にならなかったりと、
使えるキャラは非常に限らており
ゲームグラフィックが綺麗なのに勿体ないと言われていた。
そんなある日、アップデートを終えたユーザー達の目の前に現れたのが
ガチャと課金することで買うことができるSSRキャラである。
のちにユーザー達から『課金兵』と呼ばれるキャラ達は非常に強力なスキルと能力
持ち合わせており、いるといないとでは全然違ったのだ。
もちろん、運営側もヌルゲーにする気はなかったらしく、パッチなどでキャラの性能をそのままにし敵側を強化したり、オンラインイベントを開いて強力なボス討伐
をユーザ同士協力して倒そうみたいなものも出てきた。
ガチャで引いたキャラ達は陣営関係なく使え、所持しているだけでよかったので
クリアした後も普通に使え便利だった。
これらの盛り上がりがピークに差し掛かったころ、それは来た。
容量が小さいアップデートだったそれは重大なものが含まれていたのだった。
SSRの上レジェンドレアの追加だった。
元々、SSRも排出率は低いものだったのだが、レジェンドはその遥か上をいった。
ユーザー間でも、本当に出るのかと疑惑が持ち上がるほどで、
まぁ別になくてもいいや、出ればラッキー程度の中、当たった報告がされると
驚かれ、当てた人に対してみんなで称えた。
そのレジェンドキャラの能力はもはや別格であり、納得の排出率だったと言える。
簡単にいうとレジェンド1体で小国程度なら滅ぼすことができたのだ。
それはさておき、二人に命令を下す。
「エルフの長、レキスタに同行し集落を襲う襲撃者を殲滅せよ!」
「はっ!」 「御意」
まだ、余韻が残っているのかジャッドはやや声を震わせ返事をし
レオンは静かに返事をした。
二人は立ち上がり謁見の間を出ていく。ジャッドが少しずつレオンから
距離を取るのは少し滑稽だった。
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