9
謁見の間をでたレキスタはそのまま、別室に向かう。
別室で待機していたリシアに会うためだ。
護衛の二人は部屋の外で待ってもらい、リシアと二人きりで会う。
扉を開けた時、心配そうな顔をしたリシアの手をとり
安心させるように声をかける。
「大丈夫でしたよ、リシア。なんとか約束をとりつけました」
不安そうな顔をしたリシアはその言葉を聞くとすぐに明るくなった。
「おお!レキスタ様、さすがでございます。」
「ところで、リシア。あなた、彼に会う約束をした時、なんでも差し出すと言った
ことまだ覚えてますよね?」
「もちろんです」
話の雲行きが少し怪しくなってくることに気づく、リシア。
「あなたも知っているように私たちエルフには財がありません。伝承の武器などはおいそれと渡せませんし一般的な装備も今後必要です。その事を、告げた時、あなたが安易に出した言葉を盾にあの者たちは、リシア、あなたを要求してきました。」
「ど、どういう・・・」
非常に嫌なとても嫌な予感がし冷や汗が出始める。
動揺をするリシアにクスリと微笑むとレキスタは告げた。
「リシア、あなたはあのお方に嫁ぎなさい」
あまりに突然な内容に、リシアは必死に追いすがろうとするが。
「しかし、エルフと人間同士の婚姻など・・・」
「あら、別に珍しいことではないわよ?子供は作れないけど行為自体はできるし
今までに何人のエルフも王族の嫁としてあてがわれたわ。」
「こ、行為!??」
何を想像したか顔を赤らめるリシア。
「それにいい?これは私たちエルフと集落のためでもあるの。
世話役も必要でしょう。あなたと同じエルフを何人かつけるわ」
「・・・・」
「それにね、もう決まったことなのよ。覆すことは難しいわ。ねえ、私のためだと思って受けてくれない?」
そう言うとレキスタは頭を下げた。
これには、リシアも慌てた。エルフの上位者たる人物が自分如きのために
頭を下げたのだ。
「そんな!そこまでしなくても・・・!わかりました。エルフのため、
集落のため、レキスタ様のため、この身を犠牲にしましょう!」
「ありがとう」
「では、準備のために一度戻って・・・」
「だめよ、先方は今すぐ欲しいそうよ」
「えっ、では護衛は??」
「護衛は非常に強力な方を二人付けてくださいました。それに討伐隊と一緒に
私も行くのだから大丈夫よ。あなたは、夜のお仕事にだけに専念するの。いい?
あのお方の機嫌をちゃんと取りなさい?わかった?」
「は、はい。え、夜のって・・・あの心の準備がまだ」
赤くなったり泣きそうになったりするリシア後にして
部屋を出たレキスタは護衛達と合流する。
相手は嫁に欲しいとは一言も言ってないのに。
これは、リシアを安心させるためだ。これから何が待ち受けているか
わからないからこそ、最初に安心させておけばいいと思ったからだ。
経験上、特殊性癖の持ち主が、彼女を一般的な扱いをするわけがない。
この先彼女が何をされようと、どんな仕打ちを受けようと、もはや
レキスタには関係がなかった。
王城を出るとすでに外は夕暮れ時だった。
城門の前までくると、そこには精悍な顔つきをした兵士達の集団が3人を迎えた。
兵士たちは、黒紫色をした鎧と兜をしており、顔までははっきりと見えない。
だが、顔つきからいって恐らく人間だろうということがわかる。武器は槍と盾だ。
レキスタが近づくと、集団はさっと割れ、全身金色の鎧を着た男とその後ろに
全身黒い鎧に包んだ者がやってきた。
金色のほうはレキスタに名乗るが、黒いほうは沈黙したままだった。
「吾輩の名はジャッド・ファーニヴァル!陛下よりこの軍の指揮を任された。
エルフの長よ、すでに日は沈みかけておるがいかがなさるか!」
ちらりと黒いほうに目をやりつつ答える。
「これはどうも、ジャッド様。明日にも襲撃者達が集落を襲うかもしれません
エルフは夜目も効きます。護衛と共に先導しますので付いてきてください」
「わかりましたぞ!皆の者しっかりと付いていくのだぞおおお!」
そう言って明後日のほうに走り出そうとしたので、慌ててレキスタは止め
正しい方向を示し、走り出すのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます