7(ジン・ユードリックside)

リシアが謁見する少し前~


ジン・ユードリックは大きく伸びをした。内政の強いキャラ達に

面倒くさそうなことをすべて押し付けたおかげで政務の疲れはいっさいない。

しかし、領土の拡大や農地の増加、増えた人口をなにに充てるか、

次に何を建設するかはジンにしかできない仕事だ。

幸いなことに、そういうことだけをするのなら楽しい作業なので苦ではない。

だが、長時間続ければ疲れるものである。

一息ついていると、見張りに出ていたミアからメッセージが届いてた。

ゲーム内でもあった機能のひとつで、何かを発見したり報告したりする場合に

のみ、使われていた。以前、試した時、キャラから王へのみでしか使えず、

長文は送れなかった。王からキャラへ命令として送ることもできたがこちらやはり長い文章は送れない。また、キャラ同士もメッセージを送ることも受け取ることもできなかった。その時は特に重要視しなかったがひっきりなしに王への報告が

来たために今は重大な報告のみと通知してある。

メッセージ『空腹の耳長を発見。脅威度低。食料を与える許可を求む』


(耳長っていうとエルフかな?空腹っていうことはどういうことなんだ?)

食べ物くらいそのへんにあるから分け与えろよ、と思ったがキャラ達は

どういうわけか命令に非常に忠実なところがあり融通が効かないときが

あったため、たぶんそういうことなんだろうと思う。


(一度会ってみるか、一応この世界のファーストコンタクトなわけだし)


こういう時は命令で動かせないため、外にいるキャラに

口頭で伝え謁見の間に向かった。

玉座に座り、待つこと数分、一人のエルフがミアと共に入ってきた。

そのエルフにジンは目が離せなくなってしまった。

まず、目につくのは肌の色が褐色だということ。髪の色は白というより銀に近い。

顔はもう美女という他ない。時折目に鋭さも見える。

やや長身で鎧は着ているもののスタイルの良さは一目でわかるほど。

鎧の隙間から引き締まった体が見え隠れし、太ももは太い。


(ダークエルフだ!あの胸!あの足!あの髪色!)


リシアと名乗るダークエルフが報告と違った申し出をしてきたが、ジンの頭の中はそれどころではなかった。


(うちはダークエルフ少ないからな。顔も強気っぽくて好みだわー)


適当に返しつつ、どうにかならないかを考える。


(なんでもと言っても恐らく身を削ることはしないはず。でも、

できないなら削らせるまで。なんとしても、俺のコレクションに加えなければな)


建設も領土の拡大もどうでもよくなった。欲しいのはただひとつ。リシアだけ。

リシアがいなくなった後、ジンは一人のキャラを呼び出す。


「シキ、御身の前に」


ジンの前に全身真っ黒の装束着たキャラが現れる。


「シキ、あのダークエルフに気づかれないよう尾行し村の位置を知らせろ。その後、有益そうなものがあれば都度報告だ、いいな?」


「お任せください、お館様。」


そう言うと、シキは煙のように消えていなくなった。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る